水辺を使いこなす知恵を共有 大阪でミズベリング世界会議
水辺を使いこなす知恵を共有 大阪でミズベリング世界会議 THEPAGE大阪
官民連携で水辺を生かした都市再生を目指すミズベリング世界会議が9日、大阪市で開幕し、11日まで多様な討議や体験プログラムが実施された。9日夜、ミズベシンポジウムが開かれ、水辺を活性化させた内外の先進的取り組み事例が公開された。
毎月パレードが行進し世界遺産も
シンポジウム前半で、アメリカ、フランス、タイ、大阪の先進的事例が、それぞれの地域で水辺再生を推進する「ミズベラー」から報告された。 アメリカのスティーブン・シャウアーさんは、テキサス州を流れるサンアントニオ川の総合的管理業務を行う行政機関で、リバーオーソリティの重責を担う。サンアントニオ川では相次ぐ洪水で治水対策が必要になったことを契機に、長期的な水辺再生プロジェクトが推進されてきた。 毎月のようにパレードが行進する華やかさを演出するほか、生物多様性を保全する自然環境豊かなエリアやテキサス州初の世界遺産登録エリアなど、ゾーンによって特色ある魅力づくりに力を注ぐ。 地元の多くの団体が諮問委員会に結集し、市民パワーを効果的に投入。水辺のにぎわいがまちの活力につながり、多くの雇用を生み出してきた。シャウアーさんは「野心的ビジョンを持つとともに、苦しい時期を乗り越えて取り組む持続力が重要」と強調した。 タイからは大学准教授ニラモン・クンスリソムバットさんが参加し、首都バンコクで始まったチャオプラヤ川河岸を公共スペースとして活用するプロジェクトを報告。かつてバンコクは東洋のベニスと呼ばれる水の都だったが、今では川に背を向けた生活様式に変わってしまったため、水辺再生は容易ではないという。 クンスリソムバットさんは「地権者の多い私有地ではなく、行政や寺院が広い土地を所有しているエリアから公共スペースを増やす活動を始めている。市民や行政と粘り強く話し合いながらプロジェクトを進めていきたい」と、現状と展望を語った。
セーヌ河岸の水上庭園やナイトクラブが人気
フランスの報告者は、パリ市都市計画アトリエで、セーヌ河岸改造計画を主導してきたパトリシア・ペルーさん。波止場から美術館へ行ける新しい散策コースを開設。人工島の水上庭園を作って、市民がくつろぐとともに、都心でも魚が産卵できる場所を確保するなど、独創的なアイデアを導入した。 河岸で結婚式ができるし、ナイトクラブもにぎわう。同時にペルーさんは「大規模な変更でなくてもいい。心地よいスペースを用意して、市民にアートの創作活動で楽しんでもらうなど、シンプルな変更も市民に支持されている」と付け加えた。 大阪からはミズベリング世界会議プロデューサー忽那裕樹さんが出席して、水都大阪再生プロジェクトの推移を振り返った。水の回廊をテーマに官民が連携し、規制緩和や未利用地活用などのチャンスを生かし、舟運の充実、北浜テラス、中之島GATEなどの実績を積み重ねてきた。 忽那さんは「大阪人は水辺を使いこなすのがうまい。これからはエリアマネジメントを重視し、水の都と食の都をつなぐなど、さらに上手に使いこなせる環境を醸成したい」と意気込んだ。