鹿児島県・名瀬第二合同庁舎が完成 地域防災機能を強化 奄美市と協定「津波避難ビル」に
国土交通省九州地方整備局が奄美市名瀬のマリンタウン地区に整備を進めてきた「名瀬第二地方合同庁舎」(国の出先機関用施設)が完成し20日、開所式があった。これまで分散していた防災官署(名瀬測候所、奄美海上保安部、鹿児島財務事務所名瀬出張所)の入居により集約化し、災害時の施設機能維持配慮で地域防災機能が強化される。建物は高い耐震性を有するほか、津波発生には内部の階段を開放することで、一時避難が可能な「津波避難ビル」の役割も果たす。
庁舎の敷地面積は4207・43平方㍍、建築面積738・97平方㍍、延べ面積3021・31平方㍍。建物は高さ26・15㍍の鉄筋コンクリート造地上6階建て。建設工期は2022年10月~24年10月で、総事業費は約26億円。建物の1~4階を海保、5階を測候所、3階を財務事務所が使用する。 開所式では九州財務局の井秀典(い ひでのり)総務部長が式辞を述べたが、その中では建設までの経緯を説明。それによると、▽測候所と海保が現庁舎の老朽化などにより災害時に防災官署としての役割を十分に発揮できない恐れ▽市街地への良好なアクセスや防災機能の強化とともに商業施設の再編(中心市街地の形成)を図っている奄美市は、中心市街地の整備と連携し広域的な港まちづくりを推進―といった事情から、15年に奄美市、九州地方整備局、九州財務局の3者で奄美市における国公有財産の最適利用推進協議会を発足。奄美市のまちづくり事業や新合同庁舎の整備計画など意見交換が重ねられた。
その結果、「第二合同庁舎の新規事業化が妥当」との評価が得られたもので、井総務部長は「奄美市が進めるまちづくりへの寄与と防災官署の集約化による地域防災への貢献を目的に国公有財産の最適利用プランが策定された」とし、「豊かな自然に包まれた地域景観への調和に配慮した庁舎となった。海の玄関口のシンボルタワー的存在が期待されている。まちづくり、観光振興に役立つ庁舎、人と人がつながる庁舎としていく」と述べた。 福岡管区気象台の本間克幸総務部長、第10管区海上保安部の岡野勝総務部長のあいさつ、奄美市の諏訪哲郎副市長、県大島支庁の松藤啓介支庁長の来賓祝辞、九州地方整備局鹿児島営繕事務所の下史仁所長の工事経過報告もあった。 新しい国の合同庁舎は津波避難ビルのほか、東側の緑地公園は市の地域防災計画で避難・救助活動の拠点としての活用が見込まれることから、庁舎との連携を想定し、東側からも敷地へ出入り可能な計画としている。こうした機能を受けて「津波発生時における緊急避難施設」としての市民の利用が可能となる協定書を財務事務所名瀬出張所の川西浩司所長、奄美市の安田壮平市長が締結し、協定書が披露された。協定の有効期間は12月16日から。 なお、新庁舎での業務開始は測候所が28日、海保が12月10日、財務事務所が来年1月14日からを予定している。入居に伴い海保の現庁舎は解体され財務省へ引き継ぎ、測候所は建物のまま奄美市が購入し活用する。