「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」レビュー
タミヤが11月16日に発売する「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」は、全長4.42m、重量5.8トンという小型の戦車をモチーフとしたプラモデルだ。乗員2名というこの小さな戦車が、後に世界にその名を轟かせたVI号戦車である「タイガー」、「タイガーII」まで繋がるドイツ戦車の出発点となる。このI号戦車のプラモデルによって、タミヤはI~VI号までのすべてのドイツ戦車のラインナップが揃うことになる。 【画像】今回は塗装したものも作成した プラモデルでは1/35スケール、全長123mmのコンパクトなサイズでこの戦車をモデル化。頑丈な足回りや、様々な装備アイテムなど、戦車プラモデルの魅力をたっぷりと堪能できる商品となっている。 今回は組み立てレビューに加え、筆およびスプレーを使った全塗装も行ってみた。本商品の魅力を紹介していきたい。 ■ ドイツ軍に戦車という概念をもたらした「I号戦車」 最初に「ドイツⅠ号戦車B型」の歴史的背景を掘り下げていこう。ドイツは第一次大戦の敗戦で戦車の開発を禁じられていたが、密かに開発を続けていた。実戦的な戦車の開発計画を進める一方で、戦車開発のノウハウを得るべく、簡便で容易に生産でき、"数"をそろえられる戦車開発を行うことが計画される。 この計画により、機銃を2門装備した重量5トンほどの戦車が設計される。秘密保持のため「農業トラクター」という名前で開発が進められた戦車こそ、今回のモチーフとなる「I号戦車」である。B型はA型からエンジン出力を向上した改良タイプだ。 I号戦車は、ドイツ全体が戦車という概念を学ぶためには必要不可欠だった。この戦車により工場は戦車とはどういうものか、どういう部品が必要で、どう組み立てるかを学ぶことができた。そして兵士や軍全体にとっても、I号戦車は訓練用車両として多くのものをもたらした。 I号戦車はあくまで訓練用として設計されたが、ドイツ軍の力を誇示するシンボルとなり、1938年から39年のオーストリア、ボヘミアなどの占領作戦で使用され、スペイン内戦でドイツの支援戦力として実戦投入される。その後もI号戦車は非力ながらも急速に拡大していくドイツの戦力の穴埋めとして、フランス戦線や、ユーゴスラビア侵攻などにも参加していく。 I号戦車はドイツ軍の戦車開発、兵士による運用、軍による戦術など多くの新しいものをもたらした。さらにI号指揮戦車、4.7cm対戦車自走砲など派生車両を生み出し、改造車両の先例ともなった。 ■ 小さな車体ながら作りごたえたっぷりの「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」 「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」はランナー4枚というシンプルな構成だ。これに、クリヤーパーツ、ポリキャップ、エッチングパーツ、スライドマークが付属する。部品の数は少ないが作りごたえのある商品である。 注目は2枚のAランナー。履帯など足回り部品が集中しており細かい部品も多いが、パーツ配置はわかりやすく組みやすくなっている。前半はCランナーの車体下部にAランナーのパーツを付けていくという作業がほとんど。精密ピンセットなどが必要だが、とても組み立てやすいプラモデルだ。 早速組み立てていこう。まず車体下部の組立からスタート。パーツとパーツがピタリとはまり、流し込みタイプの接着剤でしっかりと接着される感触の気持ちよさは、タミヤのプラモデルならではだろう。スミ入れでリベットなどディテールも強調していく。 エンジンからの動力で履帯を動かす、ギザギザした「ドライブスプロケット」、そして「ロードホイール」と、「アイドラーホイール」を取り付け、上部に「リターンローラー」を取り付ける。 そして、2つのロードホイールを板バネで保持する8輪の「ボギー」だ。コンパクトなサイズのI号戦車の足回りはどのようなものか、各転輪がどんな働きをするのか、その技術をしっかり確認できる。組み立てることで、この戦車が後の中~大型戦車の開発ノウハウに繋がっていくかが確認できる。 そして戦車プラモデルの大きなクライマックスと言える「履帯」だ。片側だけでも14ものパーツで構成されている履帯は最初こそ組立が難しく感じるが、一番大きいパーツの接着位置は組み立て説明書にしっかり書かれており、ここをきちんと決めれば、しっかり組み上がる。流し込み式接着剤で履帯部品をくっつけ、そこから微調整していくことで、きっちり組み立てることができた。 車体の下部分を組み上げたら上部部分だ。操縦手用の視察口「クラッペ」を装甲板を取り付ける。車体後部にはエンジンの廃熱を行う格子がある。さらに様々なものを引っかけるためのフックを取り付けていく。このフックは非常に小さい部品で、接着剤を付けてからピンセットで取り付けた。 さらにライトや斧、ホーンといった部品を取り付けていく。面白いのがマフラーにかぶせる「放熱カバー」だ。「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」ではこのカバーは金属のエッチングパーツで造型されていて、プラモデルのアクセントになっている。このパーツをマフラーに合わせて丸めるのに、専用の治具が用意されており、これに挟み込むことで丸めるのだ。 丸めたカバーをマフラーにセット、ジャッキなどの部品を取り付けていく。車体右側にはパイプや、車体内部から伸びたアンテナを収納するためのアンテナケースもある。これらを取り付ければ、車体のほとんどの装備は取り付け完了だ。 次は砲塔の組み立て。ドイツⅠ号戦車B型は「7.92mmMG13K機関銃」を2つ装備している。後の戦車と比べると小さな武装に感じるが、歩兵や軽車両には非常に効果的な武装と言える。面白いのは左右で機銃の取り付け位置が異なり、同じ機関銃にもかかわらず、盾から飛び出す銃身の長さが違うところ。これは狭い戦車内部の空間をを少しでも稼ぐための処置だったという。 最後はフィギュアの組み立て。「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」のフィギュアの特徴が2つの頭部があるところ。1つは映画などでもおなじみの「サイドキャップ」を付けた頭部。もう1つが「ベレー帽」をかぶった頭部。ベレー帽姿は配備初期に見られたと言うことで、今回はベレー帽の頭部を使用している。 砲塔を取り付けフィギュアを立たせれば完成だ。各部を見ていこう。 今回はさらにもう1つ「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」を組み立て、塗装を行った。スプレーで全体を塗った後、各部を筆で塗っている。次章で塗装の様子を見せていこう。
HOBBY Watch,勝田哲也