尾野真千子、下積み時代の苦労が「芝居のひらめき」に
映画『神様はバリにいる』に出演している、女優の尾野真千子。2011年にヒロインとして出演したNHK連続テレビ小説『カーネーション』以降は、テレビドラマや映画になくてはならない存在として重宝されている。2013年に放送された『最高の離婚』(フジテレビ系)では、ドラマ部門で数多くの賞を受賞。2014年でもフジテレビ系月9ドラマ『極悪がんぼ』をはじめ、各局で主演ドラマが立て続けに放映されるなど、女優として着実に成長し続けている。女優としてブレイク期から安定期に入りつつある尾野だが、本人の心境は「ホンマに私の事知ってくれているのかな?」という不安定なものだという。その真意を聞いた。
飾らない私生活 ジャージ姿での外出も
「朝ドラ以降は街中で顔を指されることも増えたけれど、自分の中では『誰も私の事なんか気づかへんわ』というところがあって。顔バレしたりすると『私ってわかるんだ!?』と思ってしまう」と、未だに自らの知名度に懐疑的という。 仕事が増えた実感はあるが「バラエティ番組を見ていると、出演者が出てきた時に『キャー!』って客席から歓声が上がることがあるでしょ?あの『キャー!』が私にはあるのかな?って、今でも心配になる」と、人懐っこい笑みを浮かべる。 尾野自身、“手の届かぬ煌(きら)びやかな女優イメージ”を持つこと自体がどうも苦手らしい。「街を歩く時にも変装をしないし、たまにジャージ姿で出歩いてしまうこともある。油断し過ぎなんですよ、何度も痛い目をみた」と反省するものの「女優というと小綺麗にしていたり、イメージを大事にしたりするけれど、私の場合は『ごめんなさい、イメージ大切にできない~』みたいな」と、偽らざるありのままの姿を突き通す。
デビュー作で高評価もその後は苦労の日々
それは苦労した過去を隠さず、ありのままに語る姿にも表れている。中学生の時に映画『萌の朱雀』(1997)で映画初出演にして初主演を飾り、国内外の映画祭で高い評価を受けた。高校卒業と共に奈良県から上京し本格的に女優を目指すものの、下積み時代は長かった。 「18歳から26歳くらいまでですね。1か月1万円で過ごすのは当たり前で、明日の家賃どうしようかと悩んだり、家賃を数か月滞納したこともありました」と振り返る。 だが当時も今も、その時代を後ろ向きに捉えることはない。「確かに苦労はしましたが、それを苦労とは思いません。滞納した家賃を払いに行くと、それを許してくれる大家さんがいたり、商店街の人たちが私の苦労を知って協力してくれたり、応援してくれた。だから死なずに済んだし、そういったことが今の私の芝居に対するひらめきになっている」とすべてを芸の肥やしにする。多忙な今になって、それは十分役立っている。 「その時に痛みや苦しみを体験したからこそ、そういった場面のお芝居で表現できる。経験しないと心からの芝居って出来ないと思うんです。楽しいことや笑うことは普段から沢山あるけれど、苦労はなかなかありませんから。辛いことも『売れたときにネタとして話そう!』と思っていた」と、女優・尾野真千子を形作る上での大切な時間としている。