Z世代が持つ、絶妙なバランス感覚【SENSORS】
デジタルネイティブと呼ばれ、子どものころからインターネットを介した情報収集や交流を前提として生きる、Z世代。常に誰かと繋がっている感覚を持つ人たちも多い。 彼らは、どのように人々との関係性を保っているのだろうか。また、オンラインとオフラインに存在するあらゆる”場”やテクノロジーとは、どのように付き合っているのだろうか。Z世代の起業家たち4人に、話を聞いた。
■Z世代が求める、中距離的コミュニケーション
Z世代の映像監督YPさんは、YouTubeのコメント欄に日記のような投稿が増え、コメント欄自体がコンテンツ化していく現象を興味深く見ていると言う。 「誰かが『私もこんな思い出があります』と書き込むと、それに対してまた別の人が『私もそんなことがありました』と書き込んで、どんどん共感が集まっていくんです。コメント欄が1つのコンテンツとなって、コミュニティを作るようなムーブメントが起きています」
株式会社水星・代表取締役でホテルプロデューサーの龍崎翔子さんも、コメント欄に居心地の良さを感じる1人だ。 「YouTubeのコメント欄は、誰とも繋がっていないSNSという感覚なんです。映像をBGMにして、Twitterのようにコメント欄ばかり読んでいるときもあります」 いつでも繋がることができる現代の若者たちは、近すぎず、遠すぎない、ちょうどよい距離感を求めているのだろうか。銭湯を運営する株式会社小杉湯 COOの関根江里子さんは、 銭湯にも“必要以上に関係性が深まることのない居心地の良さ”を求めて、若者たちが集まっていると分析する。
「今、小杉湯のお客さまの半分は30代以下です。Z世代は、小さいころからすぐにPCの中の人と会話ができて、SNSも身近にあって、知りたいわけじゃなくても同級生のライフイベントをだいたい知っていて。他者が近過ぎる感覚があります」 「銭湯なら、顔は知っているけれど名前も年齢も肩書も知らないような人と、あいさつやちょっとした会話を交わすだけなんです。その人ともう二度と会わないかもしれないし、明日も会うかもしれません。ちょうどいい中距離的な関係性が居心地のよさに繋がっているんでしょうね」 龍崎さんは、中距離を求める若者たちの傾向を、ホテルにも見出している。 「ホテルにもそういった側面があります。ゲストハウスのような距離が近い旅館だとなおさら。一晩一緒に過ごしていても、名前も職業も聞かず、深く詮索せず、ただ『ご飯おいしいね』と言い合って食べる。そんな中距離的な関係性も含めて1つの大きなコミュニティになっている場が増えているなと感じています」