ウエイトリフティング鈴木梨羅 パリ五輪でメダル獲得へ 日本女子4大会連続メダルなるか?
記録を1㎏伸ばすために何百回、何千回と挙げ続ける
──そこから約10年間、ウエイトリフターとして歩むことに。 「始めた当初は、ここまで続けるなんて全然思い描いていませんでした。でも、本当に自分は負けず嫌いなので(笑)、自分より上の階級や、自分より年上で競技歴が長い先輩にも負けたくないという気持ちでいつも練習していたので、それがすごく今につながってるのかなと思います」 ──2021年の世界選手権ではスナッチ78㎏、クリーン&ジャーク(以下ジャーク)101㎏、トータル179㎏で銀メダルを獲得しました。 「そこが一つのターニングポイントにはなりましたね。ウエイトリフティングはスナッチとジャーク、それぞれ3本ずつ試技があるのですが、そのときは1本ずつしか成功できなくて。心から喜べる試合ではなかったのですが、応援してくださる人や支えてくださる人が自分以上に喜んでくれたこともそうですし、自分のなかでもメダルを取ったことでプライドではないけれど、『本物になりたい』という気持ちが出てきて」 ──世界の表彰台に上がっただけでは、まだ〝本物〟ではないと? 「そのメダルを、まぐれだと言われたくないなって。もう一度自分の力で、もう一度世界でメダルを取ることによって自分で自分のことも認めたいし、周りの人にもメダリストの顔のなかに自分を入れてもらいたいなと思って頑張ってきました」 ──そこからは一歩、一歩、重量の数字を上げていく道のりに。 「本当にその通りで、まずはスナッチ80㎏、ジャーク100㎏を目指し、それをクリアできたら、次は85㎏と105㎏……。バーベルのプレートは赤が25㎏、青が20㎏、黄色が15㎏なんですね。20㎏のシャフトに赤と黄色をつけて100㎏、赤と青なら110㎏。だから『次は赤と青まで行きたい!』とか。そういう単純な気持ちも含めて、毎日自分のベストを更新することを意識していたら、自然と記録も上がっていきました」 ──記録の限界や自分の限界を感じることはなかったですか。 「正直、1年に1㎏、2㎏伸びたらすごいことだし、嬉しいんですよ。そのために何回も、何百回も、何千回もバーベルを挙げているんですけど、やっぱり更新するのって心技体が一致しないといけないですし、怪我なく練習を積み重ねる必要があるので、そんなに伸ばせるのかなっていう思いが最初はありました」 ──記録が大きく伸びるようなブレイクポイントはありましたか。 「いきなり伸びるというより、たとえばだんだんと取材していただく機会が増えて、少しずつ自分の夢を語ることによって、それが目標になった部分もありました。人に宣言するからには、自分に嘘なく、自分との約束を守るためにやらなきゃと覚悟が決まって、気づいたらポンと記録が伸びたりして、だんだん現実味が出てきたというか。『イケるかも』という気持ちから、今はもう『やるしかない』という気持ちでいますね」