『源氏物語』誕生でまひろと道長の関係も大きな転機に…ついに1本化した2人の世界線【光る君へ】
吉高由里子主演で女流長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。8月18日放送の第31回「月の下で」では、藤原道長が『源氏物語』誕生の、最大のキーマンになるという展開に。ここからまひろ&道長の関係も大きく変化する、その予兆を感じさせる回となった。 【写真】『源氏物語』誕生の瞬間の演出が話題に ■ 覚悟の元で物語を差し出したまひろは…第31回あらすじ 藤原道長(柄本佑)は、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)と藤原公任(町田啓太)の助言にしたがい、まひろに「『枕草子』を超える読み物」の執筆を依頼する。その頃の道長は、嫡妻・倫子(黒木華)とは、一条天皇(塩野瑛久)の中宮となった娘・彰子(見上愛)をめぐってすれ違い。もう一人の妻・明子(瀧内公美)の方も、息子たちの位についてあれこれ言われるのをうとましく思い、どちらの家にも帰らない日々が続いていた。 まひろは一度は物語を書き上げるが、道長から「天皇に献上するための物語」という真の目的を聞き、改めて別の物語を「これで駄目なら、この仕事はここまででございます」という覚悟の元で差し出した。その内容が、天皇の機嫌をそこねかねないことを危ぶむ道長だったが、そこで初めてまひろの娘・賢子(福元愛悠)と対面。自分との間にできた娘と知らずに膝に乗せる道長を見て、まひろは目を泳がせてしまうのだった・・・。
あかねやききょうとの出会いもプラスに
『源氏物語』は、作品自体は現代まで連綿と受け継がれてきたものの、それが執筆された時期や動機などは『紫式部日記』にも記されていないため、謎に包まれている。連載開始時期一つ取っても、越前滞在時~宮仕え開始後まで意見が分かれているし、そもそも第1帖の「桐壷」から書きはじめたのかどうか? すら明確ではないのだ。ただその分、脚本の大石静にとっては、フィクションの自由度が高くてむしろありがたかったのかもしれない。 そしてこの第31回で、ついに『源氏物語』が爆誕したわけだが、大石が提示した執筆の動機は、ズバリ「道長のプロデュース」という、(あくまでも筆者は)あまり聞いたことがなかった説だった。『源氏物語』が、越前和紙の提供などの道長のバックアップがあって、連載が継続できたというのは確かだが、まさか執筆自体を依頼して、アイデアまで提供することになるとは、まひろと道長がソウルメイトという設定の『光る君へ』ならではだろう。 さらに、あらゆる感情をどストレートに歌い上げるあかね(和泉式部/泉里香)と、美しいもの・好きなものだけに全集中したききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)という、好対照な表現者に直接出会えたことも、まひろにとってはプラスだったと言える。 母や友人の殺害から国際ロマンス詐欺まで、さまざまな人間の暗部に触れ、その不条理についてウジウジと考えてきた自分だからこそ描ける世界があることを、あかねとききょうというハイレベルの比較対象があったからこそ、気づくことができたはずだ。