度重なるセーフティカーに翻弄された3時間。SCも味方にDENSOスープラが復活勝利|スーパーGT第7戦決勝レポート
10月20日、大分県のオートポリスでスーパーGT第7戦の決勝レース(3時間)が行なわれた。優勝したのはGT500クラスが39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)、GT300クラスが88号車VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)だった。 【リザルト】スーパーGT第7戦オートポリス決勝順位 シーズン6戦目となる今回のオートポリス戦(※第5戦鈴鹿の延期により、第7戦ながら6戦目)は、今季最後となるサクセスウエイトをフル搭載するレース。しかもレースフォーマットは今季から導入された3時間レースということもあり、各チームにとっては未知の戦いとなった。 レースウィーク初日は天候不良に見舞われた。雨、霧、雷の影響で土曜の公式練習と公式予選がキャンセルに。決勝日に予選と決勝を行なうワンデー開催となった。 朝8時スタートの予選はドライコンディションに近いダンプコンディションで路面温度は13℃という低さだった。決勝は13時20分スタートだったが、決勝前のグリッドで確認した限りでは、路面は基本ドライと言えど各所にウエットパッチが残っており、路面温度も21℃とまだまだ低かった。ただ、スタート直前になってコース上空に日が差してきたため、ここから大きくコンディションが変わることも予想された。 ■GT500クラス GT500のポールポジションは、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z。ヨコハマタイヤにとってはGT500で今季初ポールとなった。2番グリッドは23号車MOTUL AUTECH Z、3番グリッドは14号車ENEOS X PRIME GR Supra、ホンダ勢最上位は4番グリッドの17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTとなった。 24号車リアライズZのスタートドライバーは、決勝に向けてウォームアップに懸念があると話していた松田次生。しかし松田はオープニングラップを首位で終えると、後続に対してマージンを築いていった。14号車ENEOSスープラは一旦2番手に上がったものの、そこからのペースが上がらず、23号車MOTUL Z、17号車Astemoシビックにオーバーテイクを許した。 ただ、24号車リアライズの天下は長く続かなかった。再び上空に雲がかかったのと時を同じくするように、松田のペースは落ち始め、開始20分のところで23号車MOTULを駆る千代勝正が第2ヘアピンでオーバーテイク。首位に立った23号車は瞬く間に後続に対してマージンを築いていき、2番手とのギャップは10秒、20秒……と開いていった。 そんな中、19号車WedsSport ADVAN GR Supraがスロー走行からストップ。フルコースイエローが出た後セーフティカーに変わり、23号車NISMOの大量リードは帳消しになってしまった。 23号車NISMO、24号車リアライズ、17号車Astemo、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra、100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTのオーダーでレース再開。まもなく開始1時間を迎えようという段階だったが、上位争いをしていた14号車ENEOSをはじめ数台がリスタートと共にピットイン。ここからルーティンストップを行なうチームが増えていった。 全車が1回目のルーティンストップを終えた時点で、トップは23号車NISMO。リスタート時にピットインしたことでいわゆるアンダーカットに成功した3号車Niterra MOTUL Zと12号車MARELLI IMPUL Zが2番手、3番手につけ、日産勢のトップ3独占に変わった。 38周目(開始1時間11分)、14号車ENEOS大嶋和也とバトルしていた17号車Astemo太田格之進が接触により100Rでコースオフ。バリアにクラッシュし、SC出動となった。右カーブでインに入って抜きにかかった太田に対して、次の左カーブに向けてラインを右側に寄せた大嶋が交錯した格好だ。なお、この接触に関しては14号車にドライブスルーペナルティが出された。 レースは43周目に再開。23号車NISMOの千代はわずか4周で2番手以下に対して10秒以上のリードを築いた。その後23号車は60周で最後のピットストップに向かい、千代からロニー・クインタレッリに交代。同じ周に入った100号車STANLEYは1回目のピットストップでドライバー交代を済ませていたため、23号車の背後でピットアウトした。 その直後、64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTがクラッシュ。これで3度目のセーフティカーとなった。そしてこのタイミングでちょうどピット作業に入っていたのが3号車Niterraと39号車DENSO。ピットレーン入口がクローズとなる直前という絶妙なタイミングでのピットとなったが、ドライバー交代の必要がなかった39号車は特に大きなゲインがあり、事実上のレースリーダーだった23号車NISMOの前でコース復帰することができた。 これでレースは残り1時間を切った。68周目にレース再開となったが、36号車au TOM'S GR Supraをはじめとする2回目のピットストップを消化できていなかった車両が軒並みピットへ。これで彼らは勝負権を失ってしまった。上位のオーダーは39号車DENSO、23号車NISMO、100号車STANLEY、3号車Niterra、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTだ。 逃げる39号車DENSOの中山雄一を尻目に、当初は2番手の23号車NISMOのクインタレッリを追いかけていた100号車STANLEY山本尚貴だが、やがて背後から迫る3号車Niterra三宅淳詞とのバトルに。三宅は残り20分を切った86周目に山本をパスして表彰台圏内の3番手に上がった。 そんな中、GT300クラス車両のクラッシュでこの日4度目のセーフティカー出動。レースはSC先導のままフィニッシュとなり、39号車DENSOが2020年以来4年ぶりの勝利を飾った。2位は23号車NISMO、3位は3号車Niterraだった。 残り2戦で、タイトル争いはより接戦になった。今回7位となった36号車au TOM'S GR Supraの坪井翔/山下健太組がポイントリーダーで変わらずだが、2番手の37号車Deloitte TOM'S GR Supra笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組と3番手の100号車STANLEY山本尚貴/牧野任祐組が共に首位と2点差で追う展開。3号車Niterraの高星明誠/三宅淳詞組も7点差の4番手に接近した。 ■GT300クラス GT300のポールポジションは、6号車UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI。56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R、777号車D'station Vantage GT3、96号車K-tunes RC F GT3という順でグリッドに並んだ。しかし6号車フェラーリのスタートドライバーである片山義章はオープニングラップで4番手に落ちてしまい、777号車D'station、96号車K-tunesのダンロップタイヤ勢がワンツーとなった。 そんな中、レース開始わずか10分というタイミングで後方グリッドスタートの52号車Green Brave GR Supra GTと5号車マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号がピットイン。タイヤ交換をせず、2回の給油義務の内の1回を早々と消化する作戦に出た。なおその10分後には、2号車muta Racing GR86 GTも同じ作戦をとった。 777号車D'station、96号車K-tunesの2台は接近していたが、開始20分で96号車の高木真一がトップに立つと、そのまま快調にリードを広げていった。その後ろ3番手には、9番手スタートのポイントリーダー、65号車LEON PYRAMID AMGが浮上していた。 GT500車両のストップによりセーフティカーが出され、レースは一旦仕切り直しに。この時点でのトップ5のオーダーは96号車K-tunes、31号車apr LC500h GT、777号車D'station、65号車LEON、61号車SUBARU BRZ R&D SPORTとなった。 トップの96号車K-tunesの高木は再び快調にリードを築いていき、開始70分でルーティンストップ。ただGT300は各車のピットタイミングにかなりばらつきがあることもあってか、新田守男に交代した96号車は一旦ポジションを落とした。その後GT500車両のクラッシュで2度目のSCとなったが、スプラッシュ作戦を採用した2号車mutaを先頭にレースが再開した。 2号車mutaの後ろ、2番手にいる5号車マッハ車検もスプラッシュ組。藤波清斗が駆るこの5号車が後続に蓋をする形となったが、そこを31号車apr、61号車SUBARU、88号車VENTENY Lamborghini GT3、777号車D'station、65号車LEONらが次々と攻略していった。 2号車は100分経過時点、48周を走ったところでライバルに先んじて最後のピットストップ。しかし後にセーフティカーの手順違反でドライブスルーペナルティを受けたため、厳しい状況に置かれた。代わってトップは61号車SUBARUで、777号車D'station、65号車LEON、96号車K-tunesが続いた。 しかし、またもGT500車両にクラッシュがあり3度目のセーフティカーが出されたことで、レースの流れは大きく変わった。セーフティカー中のピットインはできない上に、各車のギャップは帳消しに……前述の上位陣は2回目のピットストップを終えていなかったため、この時点で2回目のピットを済ませていた88号車JLOC、6号車LeMansらが俄然優位な状況となった。 レース再開と共に、ルーティンストップの終わってない車両が続々ピットレーンに傾れ込んだ。これでトップは88号車JLOC、2番手は6号車LeMans、そして3番手はドライブスルー消化後のセーフティカーで命拾いした2号車mutaとなった。しかし6号車のロベルト・メリはタイヤの状態が悪くなってしまったか、2号車に交わされた後にタイヤ交換のためルーティン外のピットインに向かったため、表彰台争いからは脱落した。 そして残り16分、第2ヘアピンで大きなアクシデントが発生した。61号車SUBARUの井口卓人が、第2ヘアピンでハイスピードでコースを飛び出しガードレールにクラッシュ。この日4度目のセーフティカーとなった。映像を見ると、井口のマシンは高速でヘアピンを直進した後スピン状態に入っているため、何らかのトラブルで減速できなかった可能性が考えられる。 レースはセーフティカー先導のままチェッカー。優勝は88号車JLOCで今季2勝目、2位は2号車muta、3位は96号車K-tunesだった。 ポイントリーダーの65号車LEONは6位に入るも、ランキング2番手の2号車mutaが2位に入ったことでそのポイント差が15点から5点に接近。88号車JLOCも、今回の優勝で16点差のランキング3番手に浮上した。
戎井健一郎