“奇跡のF1残留”から3年。ボアルース長野が直面する極限の重圧と、記者が現地で感じた緊張感|フットサル/F2特集コラム
「この試合は、どうしても現地で取材したい」 11月17日に行われる、ボアルース長野とアグレミーナ浜松の一戦を前に、そんな感情が沸き出てきた。 【映像】Fリーグが誇る“最強”GK先制点の瞬間 今シーズンのF2リーグも終盤に差し掛かり、首位・長野と2位・エスポラーダ北海道によるF1昇格争いはクライマックスを迎えていた。 長野は開幕から12連勝という破竹の勢いを見せてきたなかで、第13節のリガーレヴィア葛飾戦で引き分けて連勝記録が途絶えた。そして、続く第14節、北海道との直接対決でも残り35秒で失点し、2試合連続ドローに。勝ち点6差だったライバルとのポイント差は「4」に縮まった。 首位を走り続けたチームが足踏みしている。リーグ戦は残り4試合。長野は2年ぶりの「F1復帰」へ逃げ切れるのか、それとも……。 2試合で勝ち点「6」を積むはずが「2」しか得られなかった彼らにはおそらく、追われる立場として相当なプレッシャーがかかっているのではないか。 過去、何度も“奇跡のF1残留”を果たした長野は今、どんなチームになっているのか。その目で確かめ、ホームの空気を感じ、リアルな選手の言葉を伝えたい衝動にかられた。 朝7時、東京駅を出発する新幹線に乗り込んで、試合会場へと向かった。 取材・文=青木ひかる
今季最大のピンチで響いた主将から味方への“喝”
正念場になるだろうという予感は的中。先制を許し、長野は今シーズン初めてビハインドを負った状態で第1ピリオドを終えた。このまま0-1で敗れてしまうと、北海道に首位を奪われかねない。選手たちの表情には明らかに焦りが見えた。 「ここまで自分たちが築き上げてきたものを、手放していいのか。今のままでは手放すことになる」 ハーフタイムに山蔦一弘監督から熱い言葉をかけられ、第2ピリオドで3ゴールを重ねて、3-1で終盤を迎える。しかしパワープレーから1点を返され、北海道戦と同様に、いつ同点にされてもおかしくない状況に追い込まれていた。 集中したディフェンスでゴール前を固める長野だったが、39分、プレスをかけてボール奪取を試みたもののうまくかわされてしまい、浜松のエースにシュートを打たれた。 この一撃を、GK橋野司が弾いた次の瞬間、キャプテンの三笠貴史が味方に向かって激昂した。これまで何試合もFリーグの取材をしてきたが、ここまで仲間に対して怒りを露わにする選手の姿を見たのは初めてだ。 昨シーズン、勝てた試合を引き分けてしまった「勝ち点2差」で昇格のチャンスを逃したチームの、“勝利への執念”が垣間見えた瞬間だった。 続くセットプレーのピンチも凌ぎ、3-2のまま試合は終了。勝ち点3はつかんだものの選手たちに笑顔は少なく、ビリビリとした空気がしばらくその場に漂っていた。