坂口健太郎×イ・セヨン「愛のあとにくるもの」で史上初?の挑戦
「男性=日本、女性=韓国」
さて、冒頭で触れた、坂口の〝史上初〟とは何か。今夏に刊行され、韓国カルチャーに詳しい翻訳家やコラムニストらが著者に名を連ねる「韓流ブーム」(ハヤカワ新書)には、こんな記述がある。日韓のカップルが登場するドラマや映画は、これまで「男性が韓国人、女性が日本人」という組み合わせが多かった。しかし今は「男性が日本人、女性が韓国人」というパターンが増えつつあるのだという。同書では、後者の例としてちょうど「愛のあとにくるもの」が紹介されている。 これも同書にあるが、前者(男性=韓国人、女性=日本人)の例は、ウォンビンと深田恭子が出演したドラマ「friends」(2002年)、イ・ジュンギと宮崎あおいが出演した映画「初雪の恋 ヴァージン・スノー」(07年)など。今年の初めにも、二階堂ふみとチェ・ジョンヒョプが共演する連ドラ「Eye Love You」がTBS系で放送され、人気を集めたのは記憶に新しい。
努力感じるイ・セヨンの完璧日本語
私(記者)は「冬のソナタ」の頃から、韓国ドラマや日韓のチームが製作したドラマに触れてきた世代だ。それでも、後者(男性=日本人、女性=韓国人)の例はすぐに思い浮かばない。少なくとも坂口のような、日本でトップ級の人気がある俳優が主演する作品は、過去にないのではないか。 「冬ソナ」の頃とは違い、動画配信サービスが普及して作品の数が増え、ジャンルも多様化している。今後は小栗旬とハン・ヒョジュ(出演作に映画「ビューティー・インサイド」、ドラマ「トンイ」「ムービング」など)が共演するドラマ「ロマンチックアノニマス」も25年にNetflixで配信予定と、新たな〝鉱脈〟が開拓されるかもしれない。 また、「愛のあとにくるもの」のイ・セヨンは、日本語のせりふがとても自然だ。1話目は潤吾と出会って間もない頃が、2話目は恋人として時を重ねた頃が描かれているが、後者のほうが(セリフとはいえ)より難しい表現を使いこなしていて、発音もさらになめらかに聞こえる。ホンが「日本に長く住んで、日本語を覚えていった」という設定に基づいているのか、セヨン本人が撮影を重ねる中で上達したのか。たぶん、その両方だろう。映像の舞台裏で俳優が重ねている努力は、すごいなと感じた。