36年間乗り続ける国産名車は「乗りやすい自転車のよう」 世界的人気で高騰も「『近寄るな』という感じ」
「すっかり“人に見られるクルマ”になっちゃいましたね」
クルマに興味関心のなかった「普通のOL」が、運命的に愛車に出会って36年。トヨタ・カローラレビン(AE86)に、大事に乗り続けている。修理や整備を重ね、健在の走りぶりだ。今になって人気再燃で海外にも注目されるようになったが、女性オーナーにとっては「スーパーにお買い物に行くクルマ。そこはずっとぶれないです」。まさに人生を共に歩んでいる。 【写真】引き合いが来ても「近寄るな」 世界的に人気沸騰の名国産車、36年間健在の極上モデル テニスやカラオケに行って、仕事もアフター5も楽しんでいた20代のOL。突然、“知らない世界”に引き込まれた。夏のある日のこと、「テレビで、バイクの8時間耐久レースを見て、『クルマやバイクって楽しそうだな』と直感したんです」。 もっと知りたいと、当時の会社には内緒でバイトを始める。「ガソリンスタンドに入ったんです」。クルマ・バイク好きの同僚たちからオススメされたのが、AE86だった。「当時の走り屋はみんな乗っていたというイメージで、私も勧められて、『同じのがいい。私も買う』と購入を決めたんです」。バイクに乗るのは断念したが、マイカーを手に入れ、人生が変わった。 当時5年落ちで手に入れた初期型のAE86。「このクルマは後期のカラーリングで、ブラック・シルバーのツートンなんですよ」と目を細める。 昼はOL、夜はガソリンスタンド勤務、夜中に箱根の山に繰り出す、そんな青春の愛車生活を謳歌(おうか)。サーキットでのスピード追求というより、自動車レースのスーパー耐久の観戦など、“見る楽しさ”にもハマった。ハンドルを握ることにうれしさを覚え、「246号から16号まで走ったり、環七を一周したり。このクルマで走ることが楽しくて」。 ガソリンスタンドは店舗を変えて、通算24年間働いた。それだけにオイル交換やタイヤ交換といった、できる範囲の整備はお手の物。「先日故障してしまった際は、レッカー車が来るまで、バッテリー交換など応急処置の対応をしました」。 自動車漫画の金字塔『頭文字D』が世の中に登場する何年も前から乗っている。「アルバイトの男子大学生が『なんすか、この車』と言っていたのが、時がたつに連れて、『僕にください』とお願いされるようになって(笑)。今ではただ走っているだけで、どこに行っても注目されて、外国人の方に写真を撮られるようになって。すっかり“人に見られるクルマ”になっちゃいましたね」と、近年の人気の過熱ぶりに驚くばかりだ。高値の付く大人気車だが、引き合いが来ても「『近寄るな』という感じです」。絶対に手放さない。 長い間乗っていると、経年劣化や故障トラブルは付き物。愛車は2度大きな修理をしており、25年前にエンジンのオーバーホールとオールペン(全塗装)、12年前にはサンルーフの屋根から雨漏りをしてしまい、屋根を切り取って部品を交換した。「パンクしちゃうこともあるのですが、AE86を専門に扱っている浮谷商会さんにお願いしていて、本当に心強くて助かっています。先日オススメされて、レカロのシートを導入したんですよ!」。今後は少し傷んできたリアの外装を整備予定で、いつまでも元気なAE86が見れそうだ。 ちなみに、重機も大好きで、「デカくてかわいいんですよ。ドイツの掘削機、バケットホイールエクスカベーターがお気に入りです」。愛好家の間で知られるケンクラフト・高石賢一氏から、重機の世界の楽しさを教えてもらっているという。 今回、代官山モーニングクルーズと富士ファンクルーズがコラボしたイベントに参加。東京・代官山から静岡・富士スピードウェイまでのツーリングや本場レーシングコースのサーキット体験走行を堪能。富士山をバックに、とっておきの記念写真も撮ることができた。 AE86の魅力とは何か。「やっぱりあの頃のトヨタ車はシンプルで、すごく乗りやすいんですよ。そこが大きな魅力です。今の若い子たちや外国の皆さんから注目されますが、私にとっては、AE86は乗りやすい自転車のような感覚なんです。あくまで、スーパーのお買い物のクルマなんです」。料理が大好きで、愛車で食材調達に行くのも楽しみ。いつでも気軽に乗れて、日常に寄り添ってくれる。まさに相棒なのだ。 「人生の半分以上乗っているクルマなので、これからもどこまでも乗っていきたいです」と優しい笑顔で語った。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム