「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の速報値が発表
文部科学省は2024年8月30日、2023年度(令和5年度)の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」について速報値を公表した。小中学校・高等学校における教育の情報化の実態等を把握し、関連施策を推進することを目的に、毎年実施している悉皆調査だ。調査基準日は2024年3月1日。調査内容は「学校におけるICT環境の整備状況等」と「教員のICT活用指導力」に分かれ、公立学校および公立学校で授業を担当している教員を対象とする。 【図版】関連資料を見る 学校におけるICT環境の整備状況では、児童・生徒1人当たりの学習者用コンピューターは1.1台で、2022年度と比較から横ばい。GIGAスクール構想で学校教育に1人1台端末が行き渡ったことが見て取れる。
依然として地域間の格差が残る
校内ネットワークで普通教室に無線LANを整備している比率は95.7%。これにLTEなどのモバイル通信回線を利用している比率を合わせると、無線通信環境の整備比率は97.8%になる。一方、課題となっていたインターネットへの接続速度については、通信速度(理論値)1Gbps以上のインターネット回線を整備している学校は74.1%になった。2022年度の66.3%から改善が進んでいることが分かる。ただ、都道府県ごとに見ると、92.9%(香川県)と高い整備率の県がある一方で、35.4%(岩手県)と整備が進んでいない県もあり、地域間の格差が大きい。 統合型校務支援システムの整備率は91.2%にまで高まった。統合型校務支援システムは、児童・生徒の成績処理や出欠管理に加え、授業時数管理などの教務系、健康診断票や保健室来室管理などの保健、学校事務などを統合処理できるシステムのこと。これが100%整備されている県(山口県、徳島県)がある一方で、51.6%(岩手県)にとどまる県もあり、こちらも地域間の格差が目立つ。 デジタル教科書については、児童・生徒が使う学習者用デジタル教科書の整備率は88.2%だった。ただし、教科や学年を問わず1種類でも使用すれば「整備済み」になるため整備率は高くなる。前年度からの伸びはわずかで、指導者用デジタル教科書も89.6%とほぼ変わっていない。
ICTを活用した教員の指導力は少しずつ向上
教員のICT活用指導力については、「教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力」「授業にICTを活用して指導する能力」「児童生徒のICT活用を指導する能力」「情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力」の4つの大項目を、それぞれ4つの小項目に分け、合計16小項目について調査している。 いずれの大項目も前年度と比較して向上しており、都道府県間の差は小さい。一方で、ICT活用指導力の各項目に関する研修を受講した教員の割合にはばらつきがあった。
文:小槌 健太郎