くじ引き選出の市民で温暖化対策提言 「杉並区気候区民会議」に見るシン・民主主義
違う世代の意見に「目からウロコ」
「気候区民会議」の1、2回目は、助走にあたる「学習」パート。気候変動問題全般と、「エネルギー」「循環型社会」「みどり」「交通」という4つのテーマについてそれぞれの分野の専門家らによるレクチャーが行われ、参加者に議論の前提となる知識を共有しました。 市民たちが主体的に議論する「熟議」パートは3回目から。杉並区の「めざす姿」や「取り組みアイデア」といった大きなビジョンを皆で出し合ったのを踏まえ、第4回となる今回は4つのテーマをさらに細分化。4~5人からなる12グループに分かれて、より具体的な目標や取り組みが話し合われました。 グループワークの時間は135分間。ファシリテーター役のスタッフが各テーブルに一人ずつついて、議論をリードします。参加者は自分のアイデアを付箋(ふせん)に書き出しながら、それぞれの意見を発言。付箋はテーブル上の大きなワークシートに整理されながら貼り出され、次第に各グループとしての意見がかたちになっていきました。 各テーブルにはお菓子も並べられ、リラックスした雰囲気。グループのメンバーはほとんどが今回初対面ですが、活発に議論を交わしている様子で、ときおり笑い声も聞こえてきます。参加者の50代の会社員男性は次のように語ります。 「区の募集に応じている時点で同じ問題意識を共有している人たちが集まっているので、議論はスムーズに進みました。若いメンバーからはSNSを駆使して情報発信するなど自分にはない発想が出て、目からウロコでした」 会議には、細かな工夫が随所に見られました。たとえば議論の中で助言が必要となった時には、各テーブルに用意された「杉並区」「専門家」と書かれた札を掲げることで、杉並区の職員や、専門家として会場内やオンラインで待機しているIGES(公益財団法人「地球環境戦略研究機関」)のスタッフを呼び出すことができます。 杉並区によれば、この仕組みは3回目までの会議を踏まえ、参加者が質問しやすいように今回から新たに取り入れられたとのこと。エネルギーについて議論するグループが専門家を呼んで「『再エネ由来』ってどういう定義なんですか?」と質問するなど、各グループとも積極的にこの仕組みを活用していました。