「坂を嫌いにならない」マラソン五輪2大会連続メダルの有森裕子さん、パリ代表赤崎暁に金言 思い出す故小出義雄さんの言葉
今夏のパリ五輪男子マラソン代表の赤崎暁(九電工)と、女子マラソンで1992年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅メダルの有森裕子さんが16日、福岡市のららぽーと福岡で「三井不動産スポーツアカデミー」として小学生対象のランニング教室を行った。 ■ピンクのユニフォームで快走するドルーリー朱瑛里【写真】 施設内のトラックを使ったイベントでは、リレーや赤崎との1000メートル競走が行われた。有森さんが獲得したバルセロナ、アトランタ両五輪のメダルを参加者が実際に触る時間も設けられた。子どもにメダルをかけてあげた赤崎にとっても、「(五輪メダルは)触ったこともないし、生で見たこともなかった」という貴重な体験。終了時のあいさつでは、パリ五輪に向けて「有森さんを超えるメダルを取れたらいいと思うけど、自分の目標を持って頑張りたい」と意気込みを語った。
五輪に魔物…「すんでいませんから」
五輪2大会連続でメダルを獲得した有森さん。初の大舞台まで約5カ月に迫った赤崎に対して、「『オリンピックには魔物がすんでいる』と言われるけど、すんでいませんから。自分でいいイメージを持って、全てを力にできればいいんじゃないかな。のみ込まれないで、『のみ込んじゃえ』みたいな感じでいけたらいいかなと思う」と助言を送った。 そして、この日は「あえて彼にはメダルはかけませんでした」と有森さん。「メダルが全てではないですけれども、やはり競技者であるうちは、それが一つの自分のやってきた証でもあるので、ぜひ手にできるようなイメージをしっかりと持って頑張ってきてほしい」と語った。
「いい坂があるな」
本番を想定したアドバイスも贈られた。赤崎は昨年11月にパリの本番コースを試走。「坂のアップダウンの激しいコースだった」と印象を語る。有森さんはバルセロナ五輪の「モンジュイクの丘」で急勾配を走った経験を踏まえ、「坂を嫌いにならないこと」と指摘した。当時は指導を受けていた故・小出義雄さんから坂を見かけるたびに「いい坂があるな、これを走れたら強くなるよ」と言われ、走らされまくっていたという。「坂はもともと苦手で嫌だったけど、(小出さんは)克服させようという練習ばかりだったので、バルセロナの坂がきつかったイメージがあまりない。そのくらい坂が何でもないと思うぐらいやらないと、駄目だったのかな」と笑顔で振り返った。 赤崎も現在、毎日のように坂道を走って対策を重ねているだけに、「やっていることは間違っていないと思ったので、しっかりと繰り返しやっていこうかなと思います」と話した。今後は4月13日に故郷熊本で行われる金栗記念選抜中長距離大会の5000メートルで今季のトラック初戦に臨む。「五輪だからといって特別なことをするでもなく、今まで通りの練習をやった中で、たまたまレースが海外であったという気持ちで臨みたい。大切にしている『楽しむ』ということを忘れずに、これからの練習とレースに臨みたい」。メダリストの貴重な金言も糧に、花の都に向かう。 (伊藤瀬里加)
西日本新聞社