「多分、僕はSMAPが解散したときに『死んでしまった』のだと思います」作家業引退の鈴木おさむが直面した“40代の闇”とは?
力士とちゃんこ鍋と、消えた6000万円
––––40代の辛い時期をどのように乗り越えられたのでしょうか? 40代になって悩む時間が増えたときに、これまで付き合っていた関係性の外にいる人たちとたくさん会うようにしました。逆にテレビ業界の人とは、会議で話すけど、食事には行かなくなりました。新しい出会いのひとつが、力士なんですけど。 ––––力士!? どういうきっかけで仲よくなったんですか? きっかけは「芸人鍋会」というものをやったときに、何人か力士もいらしていて、一緒にきていた元力士の人が作ってくれたちゃんこ鍋の味に感動して、思わず「一緒にお店を始めない?」と口説いたことです。彼は怪我で力士を引退してから、ずっと部屋でちゃんこ番をやっていたそうで、その話を聞いているうちに「僕にできることはないかな?」とひらめいたんです。 ––––突然、飲食店を始めたのですか? そうそう。飲食業は新しいことを始められるワクワク感があったんですよ。でも、それ故にめちゃくちゃ大変でした。 最初の初期費用に1000万円かかり、1年ごとに1000万ずつの赤字が重なって5年で6000万円が消えました。理由は簡単で、夏になると誰も食べに来ないから(笑)。6年目でさすがにキツイと思ってちゃんこ屋はたたみ、現在は昔の店を踏襲しながら居酒屋を経営しています。 ちゃんこ屋は事業としては失敗でしたけど、そこから角界の人や店に来てくれたたくさんの方との関わりができた。自分にとって、それが40代の支えになったのだと思います。 ––––違う業界、それも世代が異なる人たちと仲良くなるのは大変そうです。 僕の場合はアウェイのところに出向いて、新しい面白い友だちを作って、なんとか仕事のモチベーションを維持していたんだと思います。もちろん心細さはありますが、それ以上に刺激があるので。 そういった場では、基本的に自分は語らないようにして、聞き役に徹しつつ、お酒を飲みながらはしゃぐ。本当にそれだけ。僕、酒の場が好きなんですよ。みんなで「乾杯!」とグラスをぶつけ合うのが大好き。 力士との関係が心地よいのは、距離感があるからなんです。僕がどれだけ番組をヒットさせようが、スベろうが、彼らには何にも関係ない。彼らは彼らで、明日の取組に勝つことが大事。 僕はタニマチでもなんでもないので、彼らにとってはただの友だち。一緒にバカみたいに飲んで笑って「またね」と別れて、お互い相手が知らない場所で頑張るしかない。若い力士たちが、妙に気を遣われる存在になった自分をブチ壊してくれたような気がします。 文・インタビュー/嘉島唯 写真/山田秀隆