親の介護で「”反省”はしても”後悔”だけは絶対にするな」…「有意義」な介護をするために必要なこと
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務めた筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第26回 『「いやだ!病院で手足が縛られるのはもういや!」…施設入居者の家族に問われる覚悟「病院で“治療”するか、施設で“尊厳”を守るか」』より続く
「意思が固まる」ということ
今にして思えば、先生にはこの家族がまだ揺れているという印象があったので、ひとまず病院に行くことを勧めてみて、家族の意思を確認したのかもしれません。そこで家族が改めて「行かない」という意思を固めたので、「今度は本物だ」と思ったのでしょう。 意思が固まるとはどういうことかというと、後悔しないということです。 親が亡くなったあとに、「もっと早いうちに、いろいろなことを話しておけばよかった」とか、「あれもしてあげたかった、これもしてあげたかった」といった反省は誰にもあることです。 一方、「こんなところで死なせてしまった」とか「あのとき私たちがもう少し強い気持ちでいたら、こんなことにはならなかったのに……」というのが後悔です。
「後悔」よりは「反省」
私は、親を看取ったすべての家族が、振り返って反省することはあったとしても、後悔だけはしないようにと願っています。 反省はやがて思い出になり、生きていく糧になりますが、後悔は家族の気持ちの中に、いつまでも重いしこりを残し、思い出すのもつらい出来事になってしまいます。 自分の死が、残された家族にとってつらいだけの出来事になってしまうのは、親本人の願いではありません。親の老いや、死から逃げず向き合った家族だからこその成長とこれからの充実が、親としての願いそのものでしょう。 その願いに応えるためにも、「家族は大いに揺れていいし、一度決めたことに縛られず、何度変更してもいいのですよ」と、伝えられる介護者でありたいと思っています。 『医師「もう退院してくだい」…介護中、医師の発言をスルーする上で知っておきたい“重要ポイント”』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)
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