山田杏奈、映画「正体」横浜流星演じる逃亡犯の結末に「彼が彼だったから...」
横浜流星が主演を務める映画「正体」が11月29日(金)に全国公開される。 染井為人による同名小説を実写化した本作。ある殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一(横浜流星)が脱走した。刑事・又貫征吾(山田孝之)は、全国各地で彼と出会った安藤沙耶香(吉岡里帆)、野々村和也(森本慎太郎)、酒井舞(山田杏奈)らに話を聞くが、どれも別人のような姿で――。 【写真を見る】映画「正体」について語る山田杏奈 顔や姿を変えながら逃亡を続ける彼の思いに触れたとき、あなたは何を感じるのか? 今回、この極上のサスペンスの魅力を探るべく、物語の鍵を握る介護スタッフ・舞を演じる山田杏奈にインタビューを行った。 ――脚本・監督を務める藤井道人さんの組には初参加です。藤井監督が紡ぐ世界に入ってみていかがでしたか? 「いち視聴者として、藤井さんの作品はいつも楽しみに見させてもらっていましたし、いつかご一緒したいと思っていたので、今回すごく嬉しかったです。社会的に深掘りしたストーリーや、物語の中で生まれる人間の感情をいつも繊細かつ大胆に描いていらっしゃるので、現場でどういう演出をされるのか気になっていたのですが、(現場では)丁寧に熱意を持って芝居をつけてくださいました。 こちらも役としての感情が湧き上がりましたし、そういうところから一つひとつ素晴らしい作品が生まれているんだなと思いました」 ――藤井監督とはどんなやりとりがあったのでしょうか? 「私が演じた舞は、視聴者に一番近いというか。『テレビの中の事件』として見ていたのに、じつは近くに鏑木がいて、傍観者から当事者になるという役なのですが、監督から『揺らぐ感情を一つひとつ丁寧にやってもらえたら』とお話をしていただきました」 ――撮影現場での印象的な思い出を聞かせてください 「寒い時期に撮影をしたときに、温かい食事を用意してもらったのですが、藤井さんが『山田さん。ここに座りなよ』と、輪の中に入れてくださいました。みんなで長テーブルを囲んでお昼を一緒に食べたのは、温かさを感じた時間だったなと思います」 ――山田さんが演じられた舞の第一印象を教えてください 「その辺にいそうな、ごくありふれた少女という感じがしていて、だからこそ私自身も共感することがありました。深く考えずに動いてしまうところもあるのですが、その迂闊さってみんなも持っているものだと思いますし、それをきっかけに物語が動くので、彼女の焦りも想像しやすい役だなと思いました」 ――物語が紡がれていくにつれて、舞はどんな変化をしていく役だと感じていますか? 「それが悪いことではないけど、自分が苦しくなったときに楽な方を選択していた舞が、逃げずに向き合うようになるというか...。 ある思いを持った鏑木と出会って、彼の生きようとする力や、人を信じたいと思う力に動かされて、最後に自分も決断をするのですが、舞は舞なりに『彼に恥じないように生きるにはどうすればいいのか』をすごく考えたと思うんです。(鏑木と出会ったことで)1人の人間として大きく成長したのかなと思いますね」 ――いわゆる舞のような「普通の人」を演じるのは、いろいろ探りがいがあって楽しいものなのでしょうか? 「今回は指名手配犯が身近にいる『非日常』はあるものの、それ以外の一般的な家庭での暮らしは私自身も経験があることなので、『じゃあ彼女と私はどう違うのか』を考えていく作業が、見落としそうで大変でもあり、楽しさでもあるのかなと思いますね」 ――鏑木はある目的を持って逃亡します。彼の思いに触れたとき、どんな感情になりましたか? 「その思いが生きる目的になっているからこその執念というか、ひとつ腹をくくった感じがありますよね。想像もつかないぐらい大変な道を歩んでいますが、自分のことも信じているから行動に移せるわけで。最後にあのような結末を迎えたのは、彼が彼だったからなのかなと思います。他の人だったらきっと無理だっただろうなって」 ――鏑木を演じる横浜さんの印象を教えてください 「撮影中は、横浜さんが必死にもがいている姿に鏑木を感じていたし、いつも鏑木として現場にいらっしゃる気がしていて『ものすごくストイックだな』と思いながらご一緒させてもらっていました。あるシーンで、言葉を発する場面ではなかったのに、鏑木がそこにいると感じて、こちらの気持ちも動いて...という瞬間があったのですが、それは横浜さんだからできることだなと思いました」 ーー共演シーンの多かった横浜さんの「正体」(意外な一面)を教えてください 「藤井さんと横浜さんが、山田孝之さんに緊張されていて、『あの2人でも緊張するんだ』と思いました。もちろん私も緊張はするのですが、お二人も緊張されていたのが意外でしたね(笑)」 ――リスペクトがある分、そういった感情になるんですね(笑)。そんな藤井監督と横浜さんは長らく作品をご一緒されています。現場ではどんな雰囲気だったんですか? 「藤井さんと横浜さんの関係性がものすごくできている現場で、仲がいいなと思って見ていました。『仲の良さ』と『お芝居の演出』は、どう両立しているんだろうと思っていたのですが、お二人なりのバランスがあって、お互いを信頼し合いながら作っていらっしゃいましたし、それが、現場全体の良い雰囲気につながっていたと思います」 ――横浜さんをはじめ、多くの名優が出演される本作。ご自身が出演されていない共演者の方々のシーンを見ると、やはり俳優としての心は震えるものなのですか? 「ワクワクしますね。完成した作品で、初めて舞の前とは違う鏑木の姿、そんな彼と対峙する吉岡さんや森本さん、山田さんの姿を見たのですが、ストーリーの流れは知っていても、心が震わされるシーンがいくつもありました。改めて『素敵な人たちとお芝居をさせてもらっているんだな』と感じましたし、『藤井組にもいつかは...』と思っていたので、今回参加させてもらえて良かったなと思いました。 あと、スタッフさんから私のいない現場の写真を見せていただいていたのですが、顔を変えた横浜さんの写真を見たときは、『誰?』と驚きました。やはり、実際に映画を観ると『こんなことになっていたんだ』というシーンもたくさんありましたし、すごく新鮮で面白くて感動しましたね」 ――映画「正体」の撮影を終えて、いよいよ公開を迎えます。この作品は山田さんにどんな影響を与えましたか? 学びや感じるものがあれば教えてください 「こうした取材のときに、よく作品の内容にかけて『あなたにとって信じるとはなんですか?』と質問をいただくんです。確かに観終わったあとも、ずっと『信じるってなんだろう』ってどこかで考えている部分はあって...。 明確な答えは出ていないけれど、人と人との思いが交わっていく様子は、『信じるとは何か』を感じていただける映画になっていると思います」 文・写真=浜瀬将樹
HOMINIS