『インサイド・ヘッド2』、今年初の興収50億超え海外作品に 一方で実写洋画の状況は……
9月第4週の動員ランキングは、前回の本連載で危惧した通り、前週1位だった『スオミの話をしよう』が週末3日間の動員17万3000人、興収2億4500万円と公開2週目にして早くも失速。公開5週目の『ラストマイル』が週末3日間で動員23万7000人、興収3億5800万円をあげて1位に返り咲いた。公開から32日間の累計成績は動員315万4600人、興収45億100万円。興収50億円超えも時間の問題となった。 【写真】『インサイド・ヘッド2』場面カット(複数あり) 今年に入ってから公開された作品で、前週まで興収50億円超えを果たしていた作品はたった4作品。しかも、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』、『キングダム 大将軍の帰還』、『変な家』とそのすべてが国内作品だった。そんな中、『インサイド・ヘッド2』が9月22日に今年公開された洋画作品としては初めて興収50億円を突破した。8月1日に公開された同作は、祝日の9月23日までの54日間で動員395万3300人、興収50億7800万を記録。前週まで7週連続トップ5、先週末も7位に踏みとどまっていて、ディズニー&ピクサー作品としては久々のロングヒットに。2015年に公開された『インサイド・ヘッド』の最終興収は40億4000万円だったので、現時点で既に前作も大きく上回っている。 ちなみに、夏休みを通してライバル関係にあったイルミネーション作品の『怪盗グルーのミニオン超変身』は、9月23日までの67日間で動員357万8700人、興収44億8000万円。この夏のピクサーvsイルミネーション対決は世界各国同様に日本でもピクサーに軍配が上がったわけだが、1月からの通年でも外国映画ではその2作品の興収が突出していて、それに続くのは『デッドプール&ウルヴァリン』の20億7000万円。実写作品に限れば、今年に入ってから外国映画で興収20億円を超えたのはそのたった1作品だけ、という恐ろしい事態になっている。 「恐ろしい事態」というのは他でもない。邦高洋低の傾向が決定的となった昨年でさえ、興収20億円超えの外国映画は10作品、そのうち実写作品は5作品あったわけだが、今年は今後も確実に興収20億円を超えてきそうな実写作品が『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』くらいしか見当たらないのだ(フルCG作品では『ライオン・キング:ムファサ』もあるが、12月20日公開なのでいずれにせよ集計上では2025年の作品となる)。その背景には、昨年後半のハリウッドのダブルストライキによる作品不足もあるわけだが、もっと根本的な、観客の嗜好の大きな変化がいよいよ顕在化しつつある気がしてならない。
宇野維正