「鉄人」玉鷲が4勝目「前に出る」貫き40代初白星 40代幕内力士は昭和以降6人目
<大相撲九州場所>◇7日目◇16日◇福岡国際センター 東前頭11枚目の「鉄人」玉鷲(片男波)が、節目の40歳の誕生日を白星で飾った。 19歳の初土俵から変わらず、前に出続ける若々しい相撲で、前頭翠富士を押し倒し。5場所ぶりの勝ち越しへ、今場所初の連勝で4勝3敗と白星を先行させた。40代の幕内力士は昭和以降6人目。先場所で歴代1位となり継続中の、初土俵からの通算連続出場1650回に続き、また1つ、歴史に名を刻んだ。次は昭和以降2人目となる、40代での三役を目指していく。 ◇ ◇ ◇ 40歳を迎え、ますます勝負勘はさえていた。玉鷲の立ち合いは、普段よりも踏み込みが浅かった。だがこれが奏功。翠富士が左に変化することを、見越していたように即座に対応し、右のど輪で動きを止めた。今も100キロ近い握力で、相手ののどを握りつぶさんばかりに押し込み、そのまま覆いかぶさるようにして転がした。「引くとケガをする」が通説の相撲界で、初土俵から1650回も連続出場できたのは身上の「前に出る」を貫くからこそ。10代から変わらない姿勢で40代初白星をつかんだ。 「よかった。自分にお祝いです」と喜んだ。40歳は「不惑」と呼ばれ、迷いがなくなるといわれる。だが「人間なので、やっぱり迷う時もある」と本音を明かした。それでも「稽古をしっかりやれば、迷いが薄れる」と、努力で芽生えた自信で、迷いを打ち消してきたという。今も部屋の稽古場では、若い衆と同じ稽古をして汗を流している。 昭和以降、40代で幕内を務めたのは能代潟、大潮、藤ノ里、名寄岩、旭天鵬と過去5人しかいない。戦後に限れば名寄岩と旭天鵬の2人。玉鷲は昨年「30歳ので『ベテラン』と言われる年齢になったと思ったけどさらに10年か…。よく遊んだのは20代。相撲の楽しさを知ったのは30代」と語っていた。この日は「40代はもっと相撲を楽しんで、上を目指したい」と笑った。 最高位は関脇で、現在の目標は「また三役に戻りたい」と力説した。40代で三役となれば過去に能代潟しかおらず、2人目の快挙。最近はあと1歩及ばず、4場所連続で7勝8敗。毎年誕生日の取組後、部屋に戻ると、夫人と2人の愛息から手紙とプレゼントが届いている。あと1歩へ、家族の後押しを受けて勝ち越しを目指す。【高田文太】