創業社長(当時)の私的トラブル解決金を会社が肩代わり ソニーFGが買収した「保険のスタートアップ企業」の不都合な事実
こうした一連の経緯を踏まえて、自らがアドバイザリーボードを務めた企業を、今度は別の金融機関の社長として買収することが、お友達人事ならぬ「お友達買収」だと批判されている。 コーポレートガバナンスに詳しい青山学院大学名誉教授の八田進二氏は、「今回のように買い手と買われる側の両方に影響力を持つ人物がいるケースでは、どちらの利益を考えているのかわからない、という利益相反の可能性がある」と指摘する。 日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク理事長で弁護士の牛島信氏も疑問を呈する。
「具体的な買収の経緯、検討プロセス、対価、当該買収により得られる利益等を考慮して、ソニーFGがジャスト社を買収すると決めた判断が合理的なものであったか、ソニーFGの取締役において善管注意義務違反がなかったかが問題となる」(牛島氏) そのうえで、「個人的な利害関係に基づく意思決定がなされないように、社外取締役を中心としたほかの取締役は、取引の合理性を十分に検討すべき」とする。 ■トラブル解決金を会社が肩代わり
ソニーFGは、ジャスト社を子会社化することによって「少額短期保険ビジネス参入を短期間で実現し、ソニーFG全体の成長を加速できる」とまで持ち上げる。 ただジャスト社の業績は設立以来赤字が続いており、利益剰余金のマイナスを毎年積み増している。新興企業では赤字が続くことも珍しくないが、同社では売上高にあたる経常収益も伸びていない。肝心の保険契約数も減少している。 加えて看過できないのがコンプライアンスに関わる問題だ。
ジャスト社では、社長の個人的なトラブルに起因する解決金を、会社が株主から調達した資金で支払っていた。 記者が入手したジャスト社の内部資料によると、創業社長の畑加寿也氏(2024年12月17日付けで社長、同25日付けで取締役をそれぞれ退任)と、ジャスト社、ジャスト社の従業員の女性(以下、Aさん)はある契約を結んでいた。 その契約とは、畑氏に代わってジャスト社とジャスト社の兄弟会社であるjustInCaseTechnologiesが、Aさんに毎月一定額の金銭を支払うというものだ。