調査捕鯨訴訟、日豪は何をもめているの?
日本の調査捕鯨が国際条約に違反するとして、オーストラリアが日本を相手にオランダ・ハーグの国際司法裁判所で起こした訴訟の口頭弁論が7月16日、終わりました。日本が国際司法裁判所で訴訟の当事者となるのは、これが初めてです。この問題、いったい何が争点となっているのでしょうか。
そもそも捕鯨問題ってなに?
捕鯨問題のそもそもの発端は、19世紀から20世紀前半にかけて、鯨油の採取などを目的として世界中でクジラが乱獲され、大型鯨類の個体数が激減してしまったことにあります。こうした危機的状況を受け、1982年のIWC(国際捕鯨委員会)年次総会で、商業目的の捕鯨を一時停止する「商業捕鯨モラトリアム」が採択されました。これにより、先住民による捕鯨など一部の例外を除き、IWC加盟国は捕鯨を行うことができなくなったのです。 IWCが管理対象とする大型鯨類は13種。そのなかにはミンククジラのように、個体数が比較的多く、適切に管理すれば絶滅の可能性は低いとされる種もあります。日本と同じく捕鯨文化を持つノルウェーは、商業捕鯨モラトリアムに対して異議申し立てを行い、1993年からミンククジラの商業捕鯨を再開しました。現在ノルウェーは、年間400~600頭程度の商業捕鯨を行っています。 商業捕鯨モラトリアムの採択当時は、日本もノルウェーと同様に異議申し立てを行っていました。しかし、反捕鯨国のアメリカから「アメリカの200海里水域における日本の漁業を認めない」との圧力を受け、異議申し立てを撤回。国際捕鯨取締条約で認められた調査捕鯨を行いながら、生息数などのデータを集め、将来的に商業捕鯨の再開をめざす方針に転換しました。
豪「実体は商業捕鯨」
現在、日本は南極海と北西太平洋で調査捕鯨を行っています。このうち南極海の調査では、ミンククジラ850頭(±10%)、ナガスクジラ50頭、ザトウクジラ50頭を毎年の捕獲頭数と取り決めています。この捕獲頭数について、日本捕鯨協会は「統計学的に意味のある調査結果を得るための最低限の水準」と説明しています(同協会ホームページ)。 これに対してオーストラリアは、「日本の調査捕鯨の捕獲頭数は多すぎる」と主張。捕獲したクジラの肉が市場で流通していることなどから、「実態は商業捕鯨であり、国際捕鯨取締条約に反する」として、日本に南極海での捕鯨を中止することを求めています。 オーストラリアはかつて捕鯨国でしたが、1935年に捕鯨を禁止。現在はホエールウォッチング観光が盛んなこともあり、多くの国民は日本の調査捕鯨に対して批判的です。オーストラリア政府が訴訟に踏み切った背景には、こうした国内世論の後押しがあるとみられます。
日本「捕獲したクジラの利用は義務」
日本側は口頭弁論で、日本の調査捕鯨は科学的な成果を挙げていると主張。また、捕獲したクジラを可能な限り利用することは、国際捕鯨取締条約の第8条で定められた義務であることから、鯨肉の流通についての批判はあたらないとしています。 国際司法裁判所の判決は、早ければ年内にも出る見通しです。