竹内まりや『September』は一番自分の体に入っている曲「スッと歌う意味ではこの曲ほど馴染んでいる曲はないかもしれない。松本隆さんらしい詞だなと思いました」
◆歌手活動から離れる決意を持って作詞
住吉:もう1通、リクエストをご紹介します。 <リスナーからのリクエストとメッセージ> ・「僕の街へ」 息子が成人を迎えるまではここで頑張ろうと決めていた会社ですが、勤続20数年を過ぎた頃、思うところがあり、退職が頭をよぎるように。でも、なかなか踏み出せず、もがく自分がいました。 そんなときに聴いた「すべてを捨てて歩き出したら 空の色が 違って見えてくるのさ」から始まる、まりやさんの「僕の街へ」。衝撃でした! 何て潔い主人公、何てちっぽけな私。長年の社会的居場所に執着していたことに気付きました。 退職翌日は、想像以上の解放感に満たされました。まりやさんから紡ぎ出される、ポジティブで強い説得力を持つ歌詞は、私を幾度も救ってくださいました(女性・64歳) 住吉:この曲を聴いて退社の決心をされたんですね! こちらは1981年のアルバム『PORTRAIT』に収録された楽曲です。 竹内:「September」を書いてくださった林哲司さんのメロディーに自分で作詞をしたんですけども、ちょうど私が芸能活動に疲れ果てていた時期で。「よし、ここで一度歌手をやめよう」と決心したときの歌詞なんですよ。「一度すべてを捨てたら空の色が変わるんだ」と自分に言い聞かせたんです。自分のあのときの心情にすごくシンクロした歌詞なんですよね。 住吉:気持ちをシンクロされて書かれたんですね。 竹内:1回ここから離れたいって思った自分がいたので、自分に言い聞かせるように、あえて男言葉で書きました。 住吉:それはどうしてなんですか? 竹内:そっちのほうがバスに乗る景色と合っていたんです。そのちょっと前に、私はグレイハウンドバスでアメリカのサンフランシスコからイリノイまで旅をしていたんですよ。 雄大なアメリカの景色を1人眺めていたら、子どもが歩いていたり、星が綺麗だったりして。これを歌にしたらどうかなと思って旅をしたことがあったんですよ。 住吉:その思いと重なったんですね。 竹内:自分の今の心情を歌いたいということで、男の人が主人公でいいかなって思いました。 住吉:(男性にすることで)適度な距離感がありますよね。 竹内:自分のことを歌い過ぎると、今度は息苦しい歌になっちゃうんですよね。 住吉:それにしても当時、よく決心されましたね。 竹内:それだけ疲れていたんだと思うんです。自分の知らない芸能界みたいなところと、自分がやりたい音楽界みたいなところに距離を感じていて。一度芸能界にさようならをすることを決めたときの歌です。結婚も視野に入れていましたので、「人生設計し直し!」って感じでしたね(笑)。 住吉:それがなかったら今のまりやさんはいないですもんね。 竹内:(離れなければ)くたびれてフェードアウトしていたと思います。音楽を続けるっていうエネルギーがまだ残っていたのでリスタートできたんだと思います。 (TOKYO FM「FM FESTIVAL 2024 竹内まりや 45th Anniversary Special~まりやとわたしのPrecious Words~」2024年11月4日(月・祝)放送より)