「令和の米騒動」は英語で何と表現する? “Reiwa rice riots”と表現したら友人のアメリカ人から激しく反論されたワケ
「令和の米騒動」を “rice riots”と書かない理由
一方で、大正時代に起こった「米騒動」は大変な騒ぎだったようです。 当時の米騒動では派出所や商業施設への投石、電車や自動車の破壊、遊郭への襲撃・放火などが発生、1道3府37県の計369か所で約50日間にもわたりました。騒動への参加者は数百万人を数え、その鎮圧のために10万人以上の軍隊が投入されるほどの大規模な騒乱でした。正しく英語の”riots”にあたる状況だったのです。 ですから、英語の新聞などでの「令和の米騒動」を“rice riots”と書いている英字の新聞はありません。多くの新聞では、“rice shortage“と書かれているだけです。そしてその発生の原因については冷静に分析しているものがほとんどです。 例えば、在日米軍関係者が読んでいる星条旗新聞(8月28日付)では、次のように見出しが書かれています。 Perfect storm of events sparks rice shortage, ‘panic buying’ across Japan パーフェクト・ストーム(不幸な出来事の連鎖)が米不足に拍車、「パニック買い」が全国に 現在の日本の現状は、rice shortage(米不足)でpanic buying(パニック買い)が起きている状況ということです。決して、“rice riots”と表現するほどの状況ではないということでしょう。 そしてその原因であるPerfect storm of events(パーフェクト・ストーム:不幸な出来事の連鎖)として、巨大地震、台風、そして1週間の連休(お盆)が指摘されています。 ちなみに星条旗新聞では海外からのインバウンド客の増加が原因とは指摘されていません。日本人と同様に、米軍関係者も米が買えなくて困っているとレポートされています。 これらの点を総合すると、私が友人のアメリカ人に対して「日本では、海外からのインバウンド客増加が急増して『令和の米騒動 “rice riots”」になっているよ」と言ったのは状況とその発生理由の説明の両面でいささか問題があったかなと感じるところです。 「令和の米騒動“rice riots”」は、日本語と英語で単語の持つイメージが厳密は違う場合もあるという良い例だと思います。単純に日本語での表現を直訳するではなく、実態を英語でどう表現するべきかを考えるべきだと痛感させられました。 三木 雄信 英語コーチングスクール「TORAIZ」代表 1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部経営学科卒。三菱地所(株)を経てソフトバンク(株)に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏のもと、多くの米国IT企業とのジョイントベンチャーのプロジェクト、「ナスダック・ジャパン設立」「日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)買収」「ソフトバンクの通信事業参入」などのプロジェクトで、プロジェクト・マネージャーを務める。 トライズ株式会社代表、2015年に英語コーチング「TORAIZ(トライズ)」を開始。日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。 著書に、『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』(東洋経済新報社)、『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)、『【新書版】海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』『ムダな努力を一切しない最速独学術』(ともにPHP研究所)ほか多数。
三木 雄信