国内の邦人を人質に日本へも圧力…中国の狡猾な新型戦争「東シナ海封鎖し台湾『兵糧攻め』」戦慄の中身
「10万人規模の集会が開かれるなど、選挙は大いに盛り上がりました。現地の世論調査では、6割以上の人が中国との統一に反対していたんです」 【画像】「自由民主を永遠に堅持する!」 台湾の総統となった「頼清徳氏」 こう語るのは、1月13日に行われた台湾総統選を現地で取材したジャーナリストの高口康太氏だ。 当選したのは「自由民主を永遠に堅持する」と訴え、中国との統一を拒む与党・民進党の頼清徳(らいせいとく)氏(64)。民主化後初の同じ政党による3期連続政権となった。一方で「一つの中国」を主張する習近平(しゅうきんぺい)国家主席(70)と対立し、中台関係の緊張が高まる危険性がある。高口氏が解説する。 「中国は以前から、台湾の名産物パイナップルの輸入をストップ。自由貿易協定で石油化学品などの関税優遇措置を一部停止するなど、台湾への圧力を強めていました。頼氏の当選で、中国は軍事、経済、外交で威圧を強めるでしょう」 ◆ロシアの失敗で方針転換 台湾総統選の翌14日、中国の王毅(おうき)外相は「完全統一を実現する」と挑発。2024年の中台衝突が現実になりつつあるのだ。もし台湾有事が起きた場合、中国はどんな手段に出るのだろう。中台情勢に詳しい、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司氏が語る。 「私は十数年にわたり中国の内部文書を読み込んだうえで、以前はこんなシナリオを想定していました。中国人民解放軍がサイバー攻撃やミサイルで台湾軍の施設やインフラを破壊。事前に潜入している特殊部隊が主要閣僚らを暗殺する『斬首作戦』によって台湾を併合……。 しかし、この戦略は方針転換されたと思います。同じようにロシアのプーチン大統領がウクライナで検討していた『斬首作戦』による短期決戦が、米国や英国の介入により失敗し戦争が泥沼化しましたから」 新戦略でヒントとなるのが、中国国防大学教授の劉明福・上級大佐が出版した『中国「軍事強国」への夢』だ。記されるのは〈敵の心を潰す〉狡猾な戦争。監訳者でもある峯村氏が新シナリオを描く。 「まず中国が主張する『一つの中国』原則を法律でさらに強化するでしょう。’05年に作った『反国家分裂法』をアップグレードし『国家統一法』を制定。『一つの中国』を既成事実化し、台湾領海を通過する外国船舶の臨検などをします。 さらに東シナ海からバシー海峡(台湾とフィリピンの間の海峡)で特別軍事演習を実施し、機雷敷設で台湾を事実上『封鎖』。台湾は猛反発するでしょうが、各機関のホームページはサイバー攻撃を受け『祖国統一賛成』などと改竄(かいざん)されるでしょう」 中国による「封鎖」は、台湾の人々の生活を脅(おびや)かすことになるという。「兵糧攻め」だ。 「発電の約3割を担う液化天然ガスの備蓄は14日ほどしかありません。石油は約90日分。食料自給率も30%前後で、中国による『封鎖』が長引けばすぐに生活が行き詰まるんです。台湾当局は統一に向けての中国との対話に応じざるをえないでしょう」(峯村氏) 台湾を支援する米軍も、簡単には手が出せないという。峯村氏が続ける。 「中国の行動はあくまで『領海内』における法執行であり、米国が軍事行動に出れば『先制攻撃』とみなされます」 日本もけっして他人事ではない。 「米軍が中国に対し参戦する場合、在日米軍基地が重要拠点になります。しかし米軍が在日米軍基地から軍事行動に出る際には、日本政府との事前協議が必要となる。協議に入れば、中国は国内の邦人を『人質』として次々に拘束し圧力をかけるでしょう。 そうなったら日本政府はどう対応するのか……。日本の海上物流の9割はバシー海峡を通っています。『封鎖』による経済的なダメージも大きいんです。実際に中国が行動に出るのは、米国大統領選後の’25年になってからというのが現実的でしょう」(同前) 中国は、日米台を逼迫(ひっぱく)させる「狡猾な新型戦争」の準備を着々と進めている。 『FRIDAY』2024年2月2・9日号より
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