一粒千円のイチゴはなぜ売れる?被災地発のブランド化戦略とは
東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県山元町に、一粒千円の高値が付くイチゴを生産する会社がある。とちおとめなど一般的に栽培されている品種でありながら、収穫されたイチゴは毎年一流百貨店に並び、作り切れないほどの量の注文が入るという。今年からは夏イチゴの生産が始まり、7月には伊勢丹新宿本店の店頭に並ぶ予定だ。震災でイチゴ農地の95%が被害を受けた被災地・宮城県山元町から生まれた、ブランド化戦略とはー。
被災地から生まれた「食べる宝石」
ヘタのついた真っ赤なイチゴが1個、丁寧に緩衝材に包まれ、可愛らしいロゴの付いた透明のケースに収まっている。イチゴを1個単位で売る「プラチナ1個入り」は千円。イチゴがアクセサリーのようにぎっしりときれいに箱の中に並ぶ「プラチナ6個入り」は5千円、12個入りは8千円ー。「ミガキイチゴ」シリーズは、「食べる宝石」のキャッチコピーで販売されている高級イチゴだ。 「ミガキイチゴ」を生産しているのは、東日本大震災で被災した宮城県山元町にある株式会社GRA。2012年に設立されたベンチャー企業で、もともとの母体は震災後に山元町出身の岩佐大輝社長が立ち上げた復興支援ボランティア団体だ。ITコンサルタントだった岩佐社長らメンバーに当時、イチゴ生産の知識や経験は全くなかったが、町の税収のほとんどを占めていた名産品・イチゴで町の経済復興を達成しようと、農業生産法人としてイチゴの生産にとりかかった。 会社としてまず行ったのが、イチゴ生産のIT化だ。山元町で40年以上イチゴを栽培してきたベテラン農家の監修のもと、イチゴハウスの中でどのようなときに水を与えればよいか、エアコンを付ければよいか、天窓を開けたらよいかーなどのハウス内の状態を、すべて数値で記録。ベテラン農家のノウハウからデータを集積し、そのときどきに合わせて室内の気温や二酸化炭素の濃度、水やりなどを機械が自動で管理できるIT化を進めた。これまで限られた職人が付きっ切りで栽培しなければできなかったイチゴの生産を、ある程度の基準まで機械で行うことが可能となった。