「やっと搾取が終わる…」自公惨敗、国民民主躍進。無視されてきた現役世代の声が、ついに政治に反映されると言える理由
何が違ったのか。明暗を分けた国民民主と維新
現役世代にとっては千載一遇のチャンスが巡ってきているものの、日本維新の会は、改選前43議席から38議席へと後退したのが気になる人も多いだろう。 何が両者の明暗を分けたのだろうか。 どちらの政党も細かな表現は違えど「医療費3割負担の対象拡大」「終末期医療の在り方の検討」と、選挙においてはリスクとなる公的支出削減策を明言していた。 違いがあったのは、減らした支出の使途の部分だ。 日本維新の会の政策は「教育無償化」「18歳以下の医療費および出産費用無償化」といった再分配政策を中心としており、肝心の社会保険料の軽減については金額など具体的な規模感の言及を避けた。 また、選挙戦序盤で馬場代表が結党以来の党是である「金融資産課税の検討」について言及したことも、国民の中に警戒感を生んでしまった。 維新の行政改革の成果を身をもって知る大阪では、公明党に対し全勝という大金星をあげたが、比例票では政策の魅力を伝えきれず苦戦した。 対する国民民主党は「所得税が発生する『年収の壁』を103万円から178万円へ引き上げる」「年少扶養控除の復活」といった減税政策を掲げ、榛葉賀津也幹事長を中心に具体的な金額をまとめた。 そのメッセージは明確で、わかりやすかった。 年収の壁となっている控除額を引き上げることによりパートタイマーで働く女性や高齢者、あるいは学生アルバイターの手取りは増加する。また、節税目的で働く時間をセーブする必要がなくなるため、市場全体の労働力不足も改善する。 こういった「数字を伴った減税政策」の明快さが幅広い支持を集め、国民民主の比例代表の議席数は改選前5議席から17議席へ大幅に増えた。
現役世代の声が政治に反映される未来
今回の衆議院選挙で大幅に躍進した政党がもう一つある。改選前98議席から148議席へ伸ばした立憲民主党だ。 日本テレビの出口調査における年齢別の比例投票先を見ると20-30代では国民・維新の第三極があわせて約35%と最多なのに対し、50代では第三極と立憲が21%で拮抗、60代以上では立憲が野党最多の投票先となる。 つまり与党に対する高齢者の批判票は、高齢者にとってなじみ深い政治家たちが集う立憲民主党に流れたということになる。 高齢世代の人口と投票率の高さゆえに、野党の中では立憲民主党が最大の議席数を得たということだ。 選挙後、「一番に取り組みたい政策」について問われた玉木国民民主代表は「年収の壁の引き上げ(による減税)」を挙げた一方、野田立憲民主代表は「紙の保険証を使えるようにする」と答えた。 これにはさすがに「一番に取り組みたい政策がそれなのか」と、SNSで批判や失望の声が集まった。最大野党がいまだシルバー民主主義にとらわれていることが明らかになった瞬間である。 若い世代は自身の生活基盤を築くのが最優先であり、仕事で成果をあげることや、人生のパートナー探しに忙しい。ただでさえ投票に行く優先順位が低くなりがちなうえ、長く続いた“自分たち不在”の政策論争で無力感を覚えるのも仕方ない。 しかし国民民主党・日本維新の会といった第三極政党がキャスティングボートを握り、若い世代の声が政策として実現していくと、その意識も変わってくる可能性がある。 玉木国民民主代表の判断次第では、いままで見たことのない国会議論が見られるかもしれない。その可能性に、ワクワクしている。 文/中田智之
中田智之