30代A医師は感染後すぐ回復したが、なぜか患者の名前が覚えられなくなり…新型コロナウイルス最新研究からわかった「持続・潜伏感染」の恐怖
「新型コロナウイルスは風邪のようなもの」と思い始めた人も多いだろう。 しかし、決してそうではないことが最新研究から明らかになりつつある。 【画像】ウイルスはこうして「変異」している! 新型コロナウイルスがほかのウイルスと異なる「きわめて厄介な性質」とはどんなものなのか。 【※本記事は、宮坂昌之・定岡知彦『ウイルスはそこにいる』(4月18日発売)から抜粋・編集したものです。】
新型コロナウイルスは持続感染をするのか
最新の研究で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、流行を繰り返すありふれた風邪ウイルスとは異なる、きわめて厄介な性質を持つことがわかってきた。このウイルスがいったんからだに取り付くと、簡単には追い出せないことがあり、持続感染や潜伏感染を起こす可能性があるというのだ。 先に説明したとおり、新型コロナウイルスはからだの免疫をまぬがれるいくつもの仕組みを持つ。また、ウイルスに対していったんできた中和抗体が時間とともに減少する。これらのことから、もしウイルスが免疫による初期防御によって重篤な症状はまぬがれたとしても、その後、体内で長期的に生き延びる可能性がある。 つまり、このウイルスは持続感染を起こす能力を持っているのだ。最近、その可能性を支持する報告が相次いでいる。 たとえば、新型コロナ感染発症から約200日後に嗅覚消失を訴える患者で鼻腔上皮にウイルス抗原(N抗原)とウイルスRNAが検出されている。また、新型コロナ感染から100~400日後に後遺症症状を示す患者がたまたま手術を受けたところ、虫垂、皮膚や乳房組織にN抗原(ウイルス抗原によって作られた抗体)やウイルスRNAが検出された。 ほかにも、新型コロナ感染から約7ヵ月後まで糞便中に持続的にウイルスRNAが検出された例や、新型コロナ感染から3ヵ月以上経った後遺症患者の3~6割で血中にスパイクタンパク質が検出されたという報告が複数ある。 感染から治癒した後あるいは後遺症症状を示さない人では、通常は血中のスパイクタンパク質は陰性であることから、持続感染している人の体内のどこかにウイルスが潜んでいて、それが長期にわたってスパイクタンパク質を放出している可能性が示唆される。 また、検出されたウイルスが発症時に見られた当時のものであって、その後流行した変異株とは異なることから、ウイルスに再感染したのではなく、元のウイルスがそのまま残っていた可能性が考えられる。 非常に極端なケースではあるが、イギリスでは一度SARS-CoV-2に感染した人が亡くなるまでの間、505日間もウイルス陽性だったという報告がある。 自覚症状のないままウイルスに感染し続けるというのも、気持ちの良いものではないが、問題はそれだけにとどまらない。新型コロナウイルスに持続感染や潜伏感染すると、さまざまな慢性疾患になるリスクが高まるのだ。具体的な例で説明しよう。