大分市の194キロ衝突死、遺族に寄り添う女性…宇都宮市の暴走事故で夫亡くす「判決も法廷で一緒に」
大分市で2021年、時速194キロで乗用車を走行して右折車に衝突し同市の小柳憲さん(当時50歳)を死亡させたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)に問われた元少年(23)の裁判員裁判の判決が28日、大分地裁で言い渡される。宇都宮市で昨年、時速160キロ超で走行していた車に追突され、死亡した男性の妻は支えられ、励まし合ってきた小柳さんの遺族に寄り添うため大分の公判すべてを傍聴してきた。判決も法廷で一緒に聞くつもりだ。(山口覚智) 【写真】小柳憲さん=遺族提供
宇都宮市の法定速度60キロの国道で昨年2月、オートバイに乗った佐々木一匡さん(当時63歳)が、時速160キロ超の乗用車に追突され、亡くなった。宇都宮地検は同3月、乗用車を運転していた男(21)を起訴したが、その罪名は、同法の過失運転致死(法定刑の上限は懲役7年)だった。
「法定速度を100キロもオーバーして、どうして過失なのか」。佐々木さんの妻、多恵子さん(60)は知人を通じて知りあった小柳さんの姉、長文恵さん(58)の助言を受けながら、危険運転致死(同懲役20年)への訴因変更を求めて署名活動をしてきた。長さんらの署名活動後に、大分地検が危険運転致死に訴因変更を請求し、認められていた。
佐々木さんらは集めた署名簿を宇都宮地検に提出するとともに、同7月には、長さんとともに「高速暴走・危険運転被害者の会」を設立し、今年3月、検事総長宛てに訴因変更を求める要望書を提出した。地検は今年10月、宇都宮地裁に訴因変更を請求し、認められた。
この間、長さんとは毎日のように電話を交わしてきた。事故のショックで眠れない日もあったが、励まし合ったり、その日の出来事を話したりする時間が楽しみになり、前向きに生きる力になった。訴因変更が認められた際、長さんは自分のことのように喜んでくれた。
佐々木さんは「苦しかったときに支えてくれた長さんのそばにいてあげたい」と初公判から法廷で傍聴を続ける。初公判後の記者会見でも長さんの横に並んだ。公判では、高速運転を繰り返した末の事故だったことが明らかになり、「長さんの悔しさを思って胸が締め付けられた」と語る。
一方、長さんは、佐々木さんについて「一緒に闘ってきた同志。裁判を近くで見守ってくれていて心強い」と感謝し、判決については「こうした事故がなくなるように遺族の思いをくみ取った厳しい判断が出ることを願っている」と話した。