異例の12月に4年生の加入内定。筑波大GK高山汐生が描いた一気の成長曲線。先発落ちに焦りも「現状を受け入れたほうが成長の糧にできる」
定位置奪還でリーグ優勝に貢献
焦りと悔しさが芽生えていくなかで、彼は「俺、何やっているんだろう?」と自分自身に疑問を抱くようになった。 「大会後に本当にいろいろ考えました。最高学年であり、副キャプテンである自分の立場を考えた時に、チームのことを第一に考えていない自分が情けなく思ったんです。このままではチームに迷惑をかけてしまうし、何より自分にとってプラスではないと。一旦、この現状を受け入れたほうが成長の糧にできるんじゃないかと考えるようになりました」 2年生にレギュラーを奪われてしまった自分、そしてミスばかりを恐れて消極的になってしまっている自分。これが自分の現実なんだと受け入れたことで、何か吹っ切れた気がした。 「自分、自分ではなく、チームの勝利のために動くことと、佐藤が持っているものに張り合うのではなく、きちんと学びながら、自分の持っているものを磨いて勝負しようと思えたことで、急に肩の荷が降りました」 ここから高山は一気に成長曲線を描く。アミノバイタルカップ後のリーグ2試合では佐藤がスタメン出場をしたが、第11節の中央大戦後に佐藤が負傷離脱すると、再び高山にスタメンのチャンスがやってきた。 高山はこのチャンスを逃さず、佐藤が復帰してからも正守護神の座を守り続け、リーグ優勝に貢献した。 その間にも大きな転機があった。「J2の練習に複数参加をしても保留。J3に幅を広げて複数の練習参加をしても保留。でもその自分も受け入れようと思っていたので、9月に入った時に小井土正亮監督に『これ以上チームに迷惑をかけたくないので、僕はチームを優先して、ここ(筑波大)で結果を出すことに集中します』と伝えた」と振り返ったように、変に焦って練習参加を求めるのではなく、大学サッカーでチームの勝利のために全力を尽くした。そこで結果を出せば未来につながると考えたことで、高山はより吹っ切れた。 だからこそ、彼はいきなりJ1のトップクラブから突然に練習参加のオファーが来ても、力むことなく自然体で参加できたし、そこで安定したパフォーマンスを見せたことで内定を手繰り寄せた。 そしてインカレでは絶対的な守護神として活躍。準決勝で明治大の前に58分の相手のファーストシュートを突き刺されて0-1の敗戦を喫したが、試合後の高山の表情はすっきりとしていた。 「もちろん悔しい気持ちはありますが、筑波大学というところで4年間やり切れたことは僕の中で大きな財産です。そこは間違いありません」 大学サッカーで成長を遂げた高山は、これからJ1優勝チームのポジション争いという荒波に挑むことになる。だが、「これからはより厳しい世界だからこそ、自分に常にベクトルを向けて進んでいきたい」と、これからも自分を受け入れ、前に進むことに変わりはない。その信念を持って、新たなるステージに進む。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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