「本物の個性」を継承 アストン マーティンDB12へ試乗(2) ブランドにおける最高傑作の1台
ソウルフルで芳醇なV8エンジン
アストン マーティンDB12は、最高出力680psを発揮することに加えて、ファイナル・レシオがショート化され、DB11より遥かに加速が鋭い。ダイレクトで熱狂的に吹け上がるフェラーリのV8ユニットより、ソウルフルで芳醇な印象もある。 【写真】ブランドにおける最高傑作の1台 アストン マーティンDB12 競合モデル DB11も (127枚) アストン マーティンの技術者は、過度にシリアスにすることなく、従来以上のパワーとスピード、エネルギッシュさを与えることに成功した。濡れて滑りやすい状況でも、路面を処理する落ち着きは第一級でありながら、目覚ましく速い。 トランスミッションは、GTモードを選ぶとスムーズさが増す。スポーツやスポーツ+モードでは、低いギアを保持するようになるが、アクティブ・リアデフが過度に働いたり、挙動が過敏になることはない。 アクセルペダルを深く倒すと、カタパルト発進のように身体は後方へ押し付けられる。どんな状況においても、DB11より迅速。どのくらいの差があるのか、実際に比べたくなるほど。 試乗の際に、アストン マーティン会長のローレンス・ストロール氏と会話する時間を得られたが、彼はDB11をあえて「遅い」と表現していた。技術者たちも、同じ意見を耳にしていたことだろう。確かに、DB12は、DB11よりDBSへ近いように思う。 ブレーキは、スチール製ディスクが標準。カーボンセラミックはオプションで、試乗車には装備されていた。ペダルをしっかり踏み込む必要はあるが、最終的に得られる制動力はかなり頼もしい。
次のコーナーを追い求めたくなる気持ち良さ
8速ATは、スーパーツアラーというよりグランドツアラー側。デュアルクラッチATのような、キレキレの変速は叶えていない。それでも、4.0L V8ツインターボ・エンジンと調和できている。 本域でのサウンドは素晴らしい。オールドスクールな自然吸気V12ユニットほどの壮大さはないものの、野蛮さと平穏さの二面性を楽しめる。 乗り心地は、低速域では少々硬め。意図された目的を実感する。連綿と作られてきたDBシリーズより、グランドツーリング・スポーツカーへ歩み寄った事実を表している。同時に、高速域での姿勢制御は感心するほど洗練されている。路面の良し悪しを問わず。 ステアリングホイールには充分な感触が伝わり、レシオは適度にクイック。自然と安心感を抱け、タイトでバランスに優れた、直感的な操縦性を堪能したいと思わせる。 トラクションとスタビリティの制御システムも絶妙。後輪駆動らしいドライビング体験を生み、意欲的でスポーティな走りを許容する。それでいて、325km/hと680psの能力を持つDB12を、ドライバーの味方へ留めてくれる。 2023年7月のフランスでは、南部のナポレオン街道とコル・ド・ヴァンスをドライブしたが、2速や3速で巡るコーナーが多く存在した。そこでDB12は、秀抜な姿勢制御とグリップ力、滑らかで安定した操縦性を披露した。 DB11よりやや硬めの乗り心地とはいえ、高速コーナーでのフィードバックやマナーが向上していることは明確。次のコーナーを追い求めたくなる、気持ち良さがあった。