列車で落とした財布が見つかった→「え、拾い主が礼を求めている?」それが法律!? いざ直接交渉した結果
とはいえ法律は法律なのだ
釈然としないため、さらに警察官へ聞いてみました。 「拾い主が悪意のある人物だった場合、『価値の査定』でもめる可能性が高いですし、例えば落とした人が若い女性などで、個人情報を教えることで『恩人』として粘着されたらどうするのでしょうか」と尋ねると、警察官は「申し訳ないのですが、そういう法律なので……」と難しい顔。 翌日、指定された交番に行き、印刷した住民票で個人証明をして、財布を返してもらえました。そこでは「駅やデパートなどの施設内で落とし物した場合は、お礼の額は施設と拾い主の折半となりますが、JRは権利を放棄するとのことです」とも伝えられました。 「落とし物の価値の5~20%」を折半ですから、つまり拾い主は落とした物の2.5~10%をもらえることになります。財布に入っていたのは2万円程度で、ICカードの残額はほぼありませんでしたから(チケットレス特急券はクレジットカード購入なので、残額からは引かれない)、上限の10%でも大した金額はお礼できないなと感じました。 なお、この時に法律上、列車内の落とし物を見つけた場合はどうすればよいのかも説明を受けました。 曰く「見つけた列車・駅構内で車掌や駅員に届ける」ことが適切で、それが最も早く落とした人に届くのだそうです。一方、「落とし物を駅の外に持ち出してから24時間以上経つと、お礼を受ける権利がなくなるだけでなく、窃盗罪に問われる可能性もあるので、交番ではなく鉄道側のスタッフに渡した方がベター」だそう。
いよいよ拾い主と交渉へ…
拾い主の住所と電話番号を渡されて、いよいよ直接交渉することに。電話番号にメールを送ったところ、はじかれてしまいました(番号違いによる筆者のミス)。ほかの予定が迫っていたので、不本意ながら交渉を後回しにしていると警察から電話があり、「お礼の連絡がこないと先方が言っている。電話してくれ」と伝えられました。 「メールではなく、証拠が残らない会話は嫌なのだけど」と考えつつ電話し、お礼を申し上げたうえで銀行口座を教えてもらいました。お礼は「法律上の上限+振込手数料は筆者持ち」という話で応じてもらえました。 ただやはり、「お互いの個人情報を交換して、お礼について直接交渉する」という法律は時代に合っていると思えず、疑問を感じました。「警察官立ち合いのもと交渉する」とか、「警察が管理するSNS上でお礼の交渉をする」など、落とした人と拾った人の双方が不安を感じずに済むような方法があればと感じた次第です。
安藤昌季(乗りものライター)