【登場が噂されるジムニー5ドア! ライバルはこれだ】(1)ダイハツ・タフト:逆のアプローチから生まれた同ジャンルのクルマ
ダイハツ・タフトとスズキ・ジムニーの違い
ダイハツ・タフトとスズキ・ジムニーは同じSUVにカテゴライズされるものの、その成り立ちはまったく異なるクルマだ。 【関連画像】ジムニー5ドアの対地障害角図 決定的な違いは車体構造にある。タフトは乗用車と同じモノコックボディを採用しており、軽自動車に大径タイヤを履かせたうえで車高をリフトアップし、SUVらしい特徴を与えたクルマに過ぎない。 対するジムニーは、ラダーフレームと呼ばれる高強度・高耐久のはしご状フレームにキャビンが乗った構造をしており、ラダーフレームだけですべての負荷を受け止められるようになっている。サスペンションも駆動系も作りは本格的なオフロードカーそのものだ。 言ってしまえば、タフトは急傾斜や岩場を走行するようなオフロード走行には適さない。しかし、ジムニーのストレッチ版とも言えるジムニー5ドアは、タフトと用途が似てくる。 ボディが延長されることでジムニー5ドアは、持ち前の悪路走破性能がわずかに低下してしまう。より正確に言えば、ホイールベースが長くなったことで3ドアモデルよりも対地障害角が劣ってしまうのだ。 オフロード走行においてボディ剛性やサスペンション形式は重要だが、起伏のある路面を走行するうえでさらに重要なのは駆動方式と、駆動を邪魔しない車体下回りの設計と言える。 タフトとジムニー5ドアにおける下回りの設計に焦点を当てて、両車の悪路走破性能を比較してみよう。
対地障害角からジムニー5ドアとタフトのオフロード性能を比較
オフロード走行では「対地障害角」と呼ばれる以下の3つの数値が重要視される。 アプローチアングル: 前輪の接地点とフロントバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度デパーチャーアングル: 後輪の接地点とリアバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度ランプブレークオーバーアングル: 前後輪それぞれの接地点とホイールベースの中心を結んだ線が交差する角度 以上をまとめた「3アングル」の数値は、車体全長とホイールベース、最低地上高の寸法に加え、車体下回りの形状によって大きく変動する。 アプローチアングルとデパーチャーアングルが大きいほど、平地から急傾斜を差し掛かる際、あるいは急傾斜から平地へ差し掛かる際にバンパーが地面に干渉しづらい。ランプブレークオーバーアングルが大きいほど凸部を乗り越える際に車体下面が腹づきしにくくなる。 バンパーや車体が地面と干渉すると、抵抗になるうえタイヤの接地面圧が低下して空転を起こしやすくなり、最悪はその場から動けなくなってしまう。対地障害角は悪路走破性能の高さを表す重要な指標と言えるだろう。 両車の対地障害角を含むスペックは以下のようになっている。 それぞれのアプローチアングルを比較すると、ジムニー5ドアは傾斜角36度以下の傾斜なら進入できることになる。それに対してタフトは27度までの傾斜でなければバンパーが路面と干渉してしまう。 デパーチャーアングルに目を向けるとタフトの方が圧倒的に優れていることが分かる。ただし、これはオフロード走行のためではなく室内空間を広げるために可能な限りタイヤを4隅に追いやった結果であり、多くの軽自動車がこれくらいの数値になることは覚えておきたい。 ジムニー5ドアとタフトとの比較で注目すべきはランプブレークオーバーアングルだ。 ジムニーシエラのランプブレークオーバーアングルが28度であるのに対し、ジムニー5ドアは24度に低下している。これは最低地上高はそのままにボディサイズを延長した弊害であり、ジムニー5ドアはホイールベースが広がった分、3ドアよりも凸部がある路面で腹づきしやすくなったことを意味する。 とはいえデメリットばかりではない。ホイールベースが広がることで、傾斜を走行する際は車体の前後傾斜角が抑えられるため乗りやすくなるなどのメリットもある。 一方、タフトの方はランプブレークオーバーアングルの正確な数値が公開されていないが、おおよその計算で求めると21度ほどになる。一般的な乗用車のランプブレークオーバーアングルは15度前後となるため、それより遥かに優れた数値であることは間違いない。