仕事満足度ランキング1位の職種は「財務」 「プロジェクトX」支えた「泥臭い」職種は影を潜め/「doda」編集長・桜井貴史さん
「不正品質問題」で脚光を浴びる職種が人気に
――なるほど。ところで総合満足度2位の「基礎研究/先行開発/要素技術開発」とはどんな仕事ですか。 桜井貴史さん 10年後、20年後の製品化を視野に入れ、新しい技術や仕組みを研究する仕事です。現在はEV自動車が一般化してきましたが、さらなる進化を目指して製品づくりに関わっている人もいるのではないでしょうか。 将来的に自身が手掛けた製品が世に出ることにワクワクし、やりがいを感じる人が多いのだと思います。ここ数年で中途採用が増えた分野です。求められるスキルや業務内容が明確になっていることも達成感を得やすい一因でしょう。 ――「評価・実験・デバック」という、聞きなれない職種が5位にきていますね。 桜井貴史さん これは、設計過程を経た製品の試作品の操作やシミュレーションを繰り返すことで、強度や安全性を担保する仕事です。昨今不正品質問題がニュースで取り上げられる機会が増えており、企業が品質強化のために投資をしている領域です。それだけに、やりがいを感じる人が増えていると考えられます。 18位の「製品企画」は数年後の製品化を見込んで、既存の自社製品のバージョンアップを考える仕事です。技術発展を見据えるとアイデアの幅も広がりやすく、今後求められるものをサーチし、企画構想していくことに楽しみを見出す人も多いのではないでしょうか。
「プロジェクトX」の職種が時代に合わない理由
――ただ、私は70代で昭和のイメージが強いせいか、トップ20をみると、製造現場のモノづくりとか、取引先を一軒一軒回る営業職とか、巨大プロジェクトに挑戦する部門などが見当たらない点は気になります。 かつて日本経済を動かしてきた「泥臭い」職種、たとえばNHK番組「プロジェクトX」のような世界です。いかがでしょうか。 桜井貴史さん もちろん地道に売り上げを積み上げる営業や、大きなプロジェクトを担う仕事にやりがいを感じる方も多くいます。しかし、残業時間の削減が求められる昨今は、自動化できる作業はロボットに置き換え、生産性アップを目指す傾向があります。 他方、営業では商品やサービスの差別化が難しくなっていることから、営業手法を変える、システムの導入などによって営業活動を効率化することにより売り上げアップを狙う動きも広がってきています。 こうした環境の変化もあり、ワーク・ライフ・バランスの整った働きやすい環境で、自身が意義を感じる仕事をすることに、より満足度を感じる個人が増えてきたのかもしれません。 ――仕事の満足度を高めるには何が一番重要だと考えますか。 桜井貴史さん 仕事の満足度を高めるうえで重要なことは、自分は日々何を大事にしているのかという、自分のキャリアの軸です。もちろん、すべての項目が満足できればいいのですが、生活の変化や会社・職場の変化で、今は満足していても、それがずっと補償されるわけではありません。 どういう時に自分は満足するのか、またどういうことは譲れないのか、逆に避けたいのかなど、自分自身を理解したうえで、今の仕事を自分が選んでいるという感覚がとても重要だと思います。 ――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。 桜井貴史さん 仕事への満足度が高いと答えた人は、リモートワークやフレックスといった「自由度の高い働き方」や「勤務時間や人間関係」の面で満足している傾向が見られます。 近年では、人々が活き活きと働くためには、身体的・精神的・社会的に満たされた状態である「ウェルビーイング」が重要だという考えが広まりつつあります。やりがいや給与だけでなく、自分らしい仕事や働き方を自分で決めて選ぶ「キャリアオーナーシップ」が今後ますます必要になってくるでしょう。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎) 【プロフィール】 桜井 貴史(さくらい・たかふみ) doda編集長 新卒で大手人材会社に入社、一貫して国内外の学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。 2016年11月、パーソルキャリアに中途入社。新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げを牽引し、初代dodaキャンパス編集長に。大学生向けサービスの責任者を務める。 2024年4月、doda編集長に就任。サービスを通じてこれまで60万人以上の若者のキャリア支援に携わり、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している。