グーグル出身者のAI企業はなぜ東京を選んだのか 2025年に高齢化日本が生き抜くために必要なこと 崔真淑
国際通貨基金(IMF)は、日本の2025年の経済成長率を1.1%と予測しており、多くの国内シンクタンクにおいても物価は2.5%の上昇、そして賃金もそれを超える回復を見せるとの予測が散見されます。 一生お宝になるかも!?【大型の高配当株30銘柄】はこちら! しかし、2024年を振り返ると、こうした予測に違和感を持つ人も少なくないでしょう。日本では、団塊の世代が全員75歳以上となる「2025年問題」が深刻化しており、高齢者の増加に伴い、医療や介護の需要が急増し、社会保障費の増大や、さらなる増税への懸念が高まっています。さらには、地政学リスクによるインフレの加速がみられ、日本全体で見ると実質賃金も思うように伸びていないからです。 こうした環境では、お金に働いてもらおうと、あらゆる世代が投資に関心を持ってきました。しかし、その株式市場もバブルの懸念があるのかもしれない……。新NISAの積み立て投資先で人気のアメリカは、トランプ大統領が誕生することで経済の不確実性も高まっています。 ■労働力人口が減少 今回は、私達の心を不安にさせる高齢化する日本経済、アメリカの株式市場の見通しとそれによる日本の株式市場への影響、そして日本経済への希望についても考察してみます。 25年、日本は「2025年問題」と呼ばれる急速な高齢化に直面します。特に75歳以上の人口が急増し、医療費や年金負担が拡大する一方で、労働力人口が減少することが懸念されています(24年11月20日配信「The Economist」)。
というのも、平均寿命は延びている一方で、健康寿命は75歳前後のままで大きな変化は起きていないからです。75歳を超えると介護需要が一気に増えます。そしてこの状況は、社会保険料コストの増加が予測される若年層の消費余力を減少させる可能性があります。 こんな環境を打破して生産性を高めて国力を維持しようということで、AI導入が注目されています。実際、他国に比べると日本企業のAI活用は群を抜いていることを示唆する調査もあります。例えば、デロイトトーマツグループが東証プライム市場に上場する企業の部長クラス以上を対象に調査(24年2~3月)したところ9割が生成AIを導入済みと答えており、欧米の企業は2割ほどとの調査もあるだけに日本は群を抜いています。 ■緩やかな規定 日本を舞台にした注目のAI企業も登場しています。グーグル出身のLlion Jones氏とDavid Ha氏が「Sakana AI」を23年7月に東京で設立しました。自然界の知恵を取り入れた独自のアプローチでAI技術を高める企業に成長させるのではないかと期待されています。 なぜ、シリコンバレーでなく、東京なのか? 考えられる理由のひとつに、法律があります。日本のAI関連法規制は、AI技術の研究開発や実用化において、他国と比較して柔軟性が高いとされています。特に、著作権法の運用において、AIの学習目的でのデータ使用が許容されるケースが多く、これがAI企業や研究者に有利な環境を提供しています。例えば、24年7月22日配信の記事で、「フィナンシャル・タイムズ」は、日本の著作権法の緩やかな規定が、MetaやOpenAIなどの海外AI企業を日本市場に引き寄せていると報じています。一方で、クリエイターからは、自身の作品が無断でAIの学習に利用されることへの懸念も示されています。