誰もが胸を突かれるバッハの『マタイ受難曲』。キリスト教の聖金曜日に思いを馳せて【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
J・S・バッハ『マタイ受難曲』 聖金曜日に思いを馳せて聴いてみたい
今日3月29日は、2024年の「聖金曜日」です。 イエス・キリストの復活を告げる「復活祭(イースター)」の日曜日は、生誕を祝うクリスマスとともに、キリスト教における最大の祝日です。そして、毎年春にやってくる「復活祭」の2日前は、キリストの受難と死を記念する日である「聖金曜日」と呼ばれ、いにしえより福音書の記述を元に、イエスの受難を思い起こす特別な典礼が行われてきました。 J・S・バッハ(1685~1750)の「受難曲」が世界各地で演奏されるのもこの時期です。中でも、新約聖書の「マタイによる福音書」26&27章をテキストに、“キリストの受難”を描いた『マタイ受難曲』の人気は高く、かつて一世を風靡した音楽評論家の吉田秀和氏が、「“ペテロの否認”に続く第46番のレチタティーヴォ “ペテロは外に出てさめざめと泣いた”の音楽を聴いて胸を突かれないとしたら、その人はもう音楽を聴く必要などまったくない人である」という言葉を残したことも印象的。 まさに、“無人島に持っていくべき1曲”の筆頭にあがる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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