1億6,000円が無税になる「相続税の配偶者控除」だが…損するから「適用をやめるべき」ケースとは【税理士の解説】
配偶者であれば相続税が軽減される特例がある……そう聞いたことがある人も多いのでは。では実際には、どれほど軽減されるのでしょうか。相続税の配偶者の税額軽減について税理士が解説します。 【ランキング】都道府県「遺産相続事件率」…1~47位
「1億6,000万円」もしくは「法定相続分」のどちらか高いほう
相続税の配偶者の税額軽減とは 相続税の配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した課税対象の遺産の額が1億6,000万円まで、もしくは配偶者の法定相続分までであれば、相続税が課税されない制度です。 配偶者が5億円の遺産を相続した場合でも、遺産相続の割合が法定相続分の範囲内であれば、相続税は課税されません。 配偶者の法定相続分は、ほかの相続人との関係で次のように変わります。 相続税を計算するときは、相続放棄はないことにします。たとえば、子が全員相続放棄して、配偶者と父母が相続人となっても、相続税を計算するときの配偶者の法定相続分は、配偶者と子が相続人となる場合の1/2です。配偶者と直系尊属が相続人となる場合の2/3ではありません。 相続税の配偶者の税額軽減を適用したときの計算方法 相続税の配偶者の税額軽減を適用したときの、相続税の具体的な計算方法を説明します。 【例1】 次のような場合に、配偶者の税額軽減を適用したときの各相続人が納める相続税額を計算します。 遺産総額2億円(すべて課税対象で非課税の遺産はありません)。法定相続人は配偶者と子A、子B(計3人)。法定相続分で遺産分割します。配偶者の税額軽減以外の控除や税額軽減は適用しません。(1) まず、遺産総額から基礎控除額を引いて、税額計算のもとになる課税遺産総額を求めます。 基礎控除額:3,000万円+(600万円×3(法定相続人の数))=4,800万円課税遺産総額:遺産総額2億円-基礎控除額4,800万円=1億5,200万円(2) 課税遺産総額を法定相続分で各相続人に分配します。 配偶者:課税遺産総額1億5,200万円×法定相続分1/2=7,600万円子A:課税遺産総額1億5,200万円×法定相続分1/4=3,800万円子B:課税遺産総額1億5,200万円×法定相続分1/4=3,800万円(3) 一度、各相続人の仮の税額を計算して、相続税の総額を求めます。 配偶者の仮の税額:7,600万円×税率30%-控除額700万円=1,580万円子Aの仮の税額:3,800万円×税率20%-控除額200万円=560万円子Bの仮の税額:3,800万円×税率20%-控除額200万円=560万円相続税の総額:配偶者の仮の税額1,580万円+子Aの仮の税額560万円+子Bの仮の税額560万円=2,700万円(4) 相続税の総額を遺産分割の割合(この例では法定相続分)で分けた金額が、各相続人が納める相続税額となります。 配偶者の税額:相続税の総額2,700万円×遺産分割の割合1/2=1,350万円 → 0円(配偶者の相続割合は法定相続分以下であるため、税額は0となります) 子Aの税額:相続税の総額2,700万円×遺産分割の割合1/4=675万円子Bの税額:相続税の総額2,700万円×遺産分割の割合1/4=675万円