Yahoo!ニュース 意識調査で「日本でも尊厳死を」が83% どう読むべきか? 立岩真也・社会学者
11月末に行われたYahoo!ニュース 意識調査で、「日本でも尊厳死を認めるべき」が83%に上った。アメリカのオレゴン州で、末期がんの女性が「尊厳死」を実行したことを受けた調査だが、なぜ、83%の人が、日本でも尊厳死を認めるべきだと考えたのだろうか。尊厳死をめぐる倫理的な問題に詳しい立命館大学の立岩真也教授に聞いた。 (参考) 【Yahoo!ニュース意識調査】 日本でも尊厳死を認めるべき? 米オレゴン州で、末期がんの女性が「尊厳死」を実行し、行為の是非が世界中で議論に。日本でも尊厳死を認めるべきだと思いますか? 認めるべき 117,248票 (83.9%) 認めるべきではない 10,866票 (7.8%) わからない/どちらとも言えない 11,612票 (8.3%) --------
どうせ死ぬなら、「尊厳がない」より「尊厳がある」方がよいと多くの人はきっと思うだろう。その意味でなら、この結果は当然のことだ。 ただ、このような一般的な漠然とした意味での「尊厳死」と、法制化を求める人たちが主張する「尊厳死」とは同じでない。そして後者の方の「尊厳死」が何であるかは、Yahoo!ニュースの意識調査が参照を求めている産経新聞の記事「米女性「尊厳死」 日本では「自殺幇助」? 終末期医療 タブーなき議論必要」を読んでもわからない。わからないものをもとにした「投票」についてはまずは何も言えないと言わざるをえない。基本的には以上につきる。
アンケートの回答者は、医師幇助自殺を求めて実際に行った米国の女性の話と、状況が異なる日本での話をいっしょにせねばならなかったのだから、日本の話も米国の話も中途半端になったのは仕方がないともいえる。また産経新聞の記事は、ごく短い文章の中でともかくも賛否の「両論併記」はしている。比べて、この間の朝日新聞のとくにオンライン媒体での寄稿文は、日本独自の(このごろの言い方としては「尊厳死」でもない)家族の意向も勘案した「自然な死」を認めるべきという話にしても、死の自己決定は「世界の潮流」という論にしても、「賛成」の方に偏っているようだ。ただ、頑張って書かれたとは思いつつも、これらの記事は、判断の材料としては使えないと言うしかない。以下、補足の解説をしておく。 この間亡くなった米国の女性についていえば、本人は「自殺」ではなく「安楽死」だと主張したが、彼女が亡くなったオレゴン州は、「(医師によって)幇助された自殺」を認めていてそれで死んだのだから、記事の見出しの自殺幇助に「?」はいらないーー自殺幇助「罪」の対象になりうるということを言いたいのであればわからなくはないが。 そして法制化を目指している日本の尊厳死協会の人たち等が言っている「尊厳死」について。今回の米国の人の死が尊厳死協会やその主張を支持する議員連盟の人たちの言う「尊厳死」ではないというのは、まずは、その通りである。(ただその「(医師による)幇助自殺」を認めているオレゴン州の法律に「尊厳死」という名称はあるのでたしかにややこしくはある)。