ファミコン、ラジコン、牛乳瓶のフタのめんこ、シール交換…「昭和ノスタルジック漫画」が読まれるワケ
「漫画家になることをあきらめ、10年ぐらい会社員をしていました」
去る12月26日、『しなのんちのいくる』待望の最新刊、3巻目が発売された。1、2巻も含め、単行本にはブログやSNSで特に反響が大きかった作品を収録しているという。 「単行本に入れる作品は僕が決めさせていただいています。1巻目が出る時に出版元のKADOKAWAに、そのスタイルでやらせてほしいと頼みました。 最初にSNSで発表する段階では編集さんのチェックがないので、責任が自分にのしかかってくる分、リスクは大きいかもしれません。批判の声を全て拾っていたら何も描けないので、自分を信じて描きたいものを描いていこうと思っています。責任を持って発信していくしかないです」 実は仲曽良さん、20代の時に講談社の漫画雑誌『週刊モーニング』の新人賞を受賞している。その頃に描いていた漫画は、今とはまったく作風が違ったそうだ。 「当時は僕も若かったので、尖ったものを描きたいという気持ちが強くありました。ただ、モーニングで賞を取った頃は漫画の創作があまりうまくいっていなくて、受賞後に漫画誌でデビューすることができなかったんです。 それで漫画家になることをあきらめて、10年ぐらい会社員をしていました。仕事は面白かったです。 でもそのうち、漫画作品の発信の仕方が多様化してきて、SNSなどで実際にやってみたくなって、もう一度という気持ちで作品を発信サイトに投稿し始めました。それが結果的に、漫画家デビューにつながったんです」 20代の頃は尖った漫画を描いていた仲曽良さんだが、40代の今は「人の優しさを描いていたほうが面白い」と話す。 「一度社会に出て、いろんなことを学んだのが大きいと思います。あのまま続けていたら、今のテーマに行き着いたかどうか。いくるも誕生していなかったかもしれません。 約10年間、会社員生活を送って、もう少し早く作家活動ができていればと考えることも正直あります。でも今は、これでよかったのかなと。『しなのんちのいくる』は、40代でないと描けない作品でもあると思いますから」 仲曽良ハミ(なかそら・はみ)漫画家。1977年、新潟県生まれ。SNS、ブログを中心に活動中。ライブドア公式ブロガー。コミック『しなのんちのいくる』1・2・3巻がKADOKAWAより発売中。 取材・文:斉藤さゆり
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