強風、寒暖差、筋の悪い権力者…パワハラ処分「安楽智大」が再起をかけるメキシカンリーグの“過酷な環境”を経験者が証言
再起の場はメキシコ
東北楽天ゴールデンイーグルスの安楽智大投手(27)の「再起の場」がメキシカンリーグの古豪・メキシコシティ・レッドデビルズに決まった。「招待選手としてキャンプに参加」と報じられたが、ウインターリーグなど中南米のプロ野球リーグに詳しい関係者らによれば、獲得を前提としたチーム合流と見て間違いないと言う。 【写真】安楽が野球に専念するための新天地はどんな場所なのか(メキシコシティ・レッドデビルズの公式Instagramより)
安楽といえば、昨年11月、後輩選手たちへのパワハラ行為が発覚し、それを重く見た球団が自由契約の処分に下した。しかし、その発表会見で森井誠之球団社長(49)は、 「彼の将来を全て否定するものではない。彼が今後何かをしていくときに助けてほしいといった場合、前所属球団としてサポートしていく。ここからどうやって彼が社会復帰していくか見守っていきたい」 とも語っていた。「24年シーズンは無理でも、25年に復帰も?」の質問には首を振ったが、楽天球団の想いは十分に伝わってきた。 「まず、任意引退ではなく、自由契約にしたところに温情を感じました。任意引退なら、ルール上、楽天の許可がなければよその球団と契約できません。自由契約にした時点で野球を続けられる可能性が残されたわけです。実は、楽天には海外にもう一つ球団があります。台湾プロ野球リーグの楽天モンキーズです。パワハラ事件の発覚と時期が重なるようにして、モンキーズの24年体制も決まっています。イーグルスの一軍バッテリーコーチも務めた古久保健二氏(59)が監督となり、投手コーチもイーグルスOBの川岸強氏(44)に決まりました」(NPB関係者) そのため、当初はモンキーズ移籍を予想する声が多く聞かれた。それもあって、再起の場がメキシコとは、驚きを持って受けとめた関係者は多かったのではないか。
あの選手もメキシコで再生
安楽を受け入れたレッドデビルズは、福岡ソフトバンクホークスのロベルト・オスナ(29)が22年途中に千葉ロッテと契約するまで所属していた球団でもある。オスナはアストロズ時代の19年にセーブ王のタイトルを獲得したが、その後、女性への暴力問題が発覚。MLB各球団との再契約が難しくなり、母国・メキシコのレッドデビルズでチャンスを待っていたところ、ロッテ入りが決まった。 22年当時、「ロッテ側から調査を始めたのが来日のきっかけ」とも言われていた。メキシカンリーグにルートを持つNPB関係者は少なくない。今回の安楽も、同じようなルートから話がまとまったのではないかと思われる。 「巨人のメンデスも、来日前はメキシカンリーグのモンテレイに在籍していました。元DeNAの乙坂智(30=現・米独立)も21年に戦力外を通達された後、やはり、レッドデビルズと契約しました。パワーでは中南米出身の選手には敵いませんが、基本に忠実なプレー、捕球や走塁のテクニックの高さは認められており、『さすが、日本人選手』『WBSC(世界野球ソフトボール連盟)ランキング1位の国だけのことはある』と、高評価を得ています」(米国人ライター) メキシカンリーグは20チームの2リーグ制。4月からの半年間で110試合が行われる。メキシコにおける野球の競技者人口については、 「あるMLBスカウトによれば、サッカー人口が10としたら、野球はその半分以下だと言っていました」(同) とはいえ、WBCやプレミア12大会をみれば分かるように、メキシコ代表は上位進出の常連チームだ。また、WBSCが昨年末に発表したランキング(数値上で各国ナショナルチームの強さを表したもの)によれば、「1位・日本、2位・メキシコ、3位・米国、4位・韓国」となっている。レベルの高いプロリーグであり、日本人選手のレベルの高さも認めてくれている。まして、オスナのように過去のしくじりを受け入れてくれたケースを考えると、安楽にも再起のチャンスは十分にありそうだ。 だが、同時に厳しい競争も覚悟しなければならないが、日本とはあまりにも異なる“野球環境”に適合できるかどうかがカギとなりそうだ。