「おんばスギ」が朽ち果てる… 折れた枝を研究に活用へ
富山テレビ放送
立山の裾野、美女平で「おんばスギ」と名付けられたタテヤマスギの巨木が朽ち果てようとしています。 その枝を採取してタテヤマスギに関する学術研究に活かそうと樹木医や学芸員などが現地視察を行いました。 標高977メートルの美女平。 立山黒部アルペンルート、立山ケーブルカーの終点でブナの原生林や立山スギの巨木が自生し森林浴のスポットとしても人気があります。 確認されている立山スギの巨木は147本。 うち10本に愛称がつけられています。 その一つ、おんばスギ。 高さ22メートル、幹周りは6メートル91センチ、樹齢は過去の調査で600~800年と見られています。 美女平に群生する立山スギの中でも古い木の一つで老いてなお、強烈な存在感を示すことから立山信仰で女性を救う神と崇められた「おんば様」になぞらえてその名がつけられました。 20日の視察会は富山森林管理署が樹木医や博物館の学芸員ナチュラリストなどに呼び掛けたもので、12人が参加しました。 「去年から今年にかけての雪で最後の枝が折れてしまい幹だけになってしまった」 現在のおんばスギはほとんどの枝が折れて一部を残してほぼ幹だけの状態になっています。 その折れた枝を学術研究に役立ててもらい、スギの巨木への理解を深めてもらうのが狙いです。 現地では、参加者たちが枝が折れた要因について意見を交わしました。 *日本樹木医会富山県支部 佐伯肇さん 「空洞率が何パーセントになると危ない指標があるので。(見たところ)50%くらいあるかな。空洞率が大きければ折れやすくなる」 *立山自然保護ネットワーク 加藤輝隆さん 「(2015年に折れた枝の調査では)木に穴を開けて卵を産みつけて幼虫が木を食べてサナギになっていく昆虫の痕跡が非常に多く、標高1000メートルで、さらに(地上から)10メートルのところにこんなにいるのかと驚いた」 参加者はおんばスギの幹回りを調べたり、撮影したりして、今後、どのような研究に活かしていくか、イメージを膨らませていました。 *県ナチュラリスト協会 伊藤朋子さん 「朽ちていく木も芽生えていく木もあるので、森の更新のことや専門的なデータも加えて(今後訪れる人に)お話しできたらと思う」 おんばスギの調査は今後、巨木を守るための重要な情報になると期待されています。 *立山自然保護ネットワーク 加藤輝隆さん 「1部だけわずかに葉っぱが残っているので、生きていけるとホッとした。立山の自然も大きな時間でみたら温暖化で推移している。30年、50年のスパンで見ても明らかになる」 参加者は雪解け後に再び、現地を訪れ、落ちた枝を採取することにしていて、情報交換しながらそれぞれの調査研究を進めることにしています。
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