安全性や効率性を高めた次世代の原子炉（革新炉）について、米IT大手が今月、データセンター向けの電力を賄うために活用を相次ぎ打ち出した。日本でも27日投開票の衆院選で自民党や日本維新の会が開発推進を公約に掲げるなど注目されており、開発には今後1兆円を超える規模の官民投資が見込まれる。2030年代後半以降とされる実用化に向けては、革新炉の規格・基準や規制の整備などが急がれる。 ■電力需要増で原発不可欠 衆院選での各党のエネルギー政策の公約をみると、立憲民主党は党綱領にある「原発ゼロ」に触れず、国民民主党も「わが国の電力供給基盤における重要な選択肢」と位置づけるなど、原発回帰の動きが広がっている。 自民は「次世代革新炉の研究開発」、維新は「核融合発電の開発推進」と記すなど、次世代革新炉にも言及した。国民民主も次世代革新炉の開発や建設を進める方針を鮮明にしている。 人工知能（AI）の普及で電力需要の増大が見込まれる中、脱炭素と電力安定供給の両立には原発の活用が欠かせない。次世代革新炉を巡っては原発の建て替えや新増設を見据えて、各国が開発にしのぎを削っており、①革新軽水炉②小型モジュール炉（SMR）③高速炉④高温ガス炉⑤核融合炉－の5つ炉型が開発・研究されている。 ■米はSMR、日は革新軽水炉に着目 米国で具体的な計画が判明したのはSMRだ。グーグルやアマゾン・コムは米新興企業への支援や電力購入契約などを発表した。SMRは出力が30万キロワット以下と小さく、建設費を抑えられる。米政府は今年6月に事業者らの導入支援に最大9億ドルの資金を供給する方針を発表しており、海外で計画が先行している。 対する日本では既存炉をベースに安全対策を組み込んだ革新軽水炉が「5炉型の中で最も実用化が近い」（経済産業省担当者）。三菱重工業が開発主体となり、基本設計はほぼ完了している。高速炉や高温ガス炉については実証の段階だが、経産省は令和7年度からの3年間で1千億円超の開発支援を検討しており、技術確立を急ぐ。 一方、次世代革新炉を巡って、規格・基準や規制などはまだ定めれていない。原子力規制庁と事業者が実務レベルで意見交換する場が今月設置され、議論が本格化するのはこれからになる。「規制以外にも、事業者が巨額な投資の回収を予見できる制度の整備など、実用化に向けた課題は山積している」と関係者は指摘する。（万福博之）