大谷翔平、山本由伸…10年以上もの複数年契約はおかしい/廣岡達朗コラム
戦力均衡の精神が崩れた
ロサンゼルス・ドジャースは何か考えがあって2人の日本人を獲得したのだろう。しかし、あれだけ大金を使って日本人を集め勝とうとするのは、メジャー・リーグの名折れである。 【選手データ】山本由伸 プロフィール・通算成績 大谷翔平の10年7億ドル(約1015億円)に続き、山本由伸とは12年3億2500万ドル(約471億円)で契約を結んだ。 10年以上もの複数年契約はおかしい。それだけの期間、野球選手がピークの状態を保つのは不可能だ。いつも私が言うように、人間は年齢とともに衰える。大谷は29歳、山本は25歳。2人とも契約年数の半分ももたないと思う。 ドジャースが大谷と山本を獲得すること自体、悪いことではない。彼らはチーム内で優遇される。だが働かなければ、メジャーはGM的立場の人間がその責任を問われる。だからいい加減には獲らない。2人の成績が悪ければ、これだけ減額されるという条項が絶対にある。それを日本のメディアは報じない。 アメリカの専門家はルールを自分たちの都合のいいように変えていく可能性がある。現に大谷の契約内容は、オーナーか編成本部長のどちらかが現職を退いた場合、途中で大谷側から契約を破棄できるオプトアウトが盛り込まれているという。そんな契約は契約と言えるだろうか。 アメリカは民主主義の国である。多民族国家だけに、平等でなければクレームが出る。戦う前から、このチームが勝つだろうと見透かされるような選手補強もしてこなかった。開幕の時点で横一線でなければ観客が来ないからだ。今回の2件の契約は、そうした戦力均衡の精神が崩れたことを意味している。
投げるとき重要なのは重心
山本は3年連続沢村賞に輝いた実績を見ても、素質はある。しかし、常に走者を背負っているような投げ方をしていたら、日本のコーチは何を教えていたのかと海の向こうで思われる。重心をどこに置いたらいいかを分からない人間が教えていた証拠だ。 今の日本球界ではスピードガンで150キロが当たり前のように計測され、速い球を放れる投手がもてはやされるが、それは間違いだ。生きた球を放れるかどうかを見なければいけない。スカウトは本来、球速ではなく、球のキレを見るべきなのだ。私が重視するのは重心がどこにあるか、である。 元ロッテの村田兆治は「マサカリ投法」と称される変則的な投げ方をしていたが、軸足の右足に沈み込ませた体を元に戻したときには重心が安定するという良さがあった。 山本もドジャースで良いコーチに巡り会えば、さらに化けるだろう。