3世俳優のプレッシャーは〝過去形〟 「背負ったものがある方が、強い」 寛一郎「プロミスト・ランド」
自分の位置が分かってきた
祖父・三國連太郎、父・佐藤浩市に続き、俳優一家の3代目。歌舞伎界ならいざ知らず、映画界では珍しい。幼い頃から撮影現場をのぞき、19歳で初めて映画に出演した。「三國の芝居は、彼が亡くなった後、自分が役者を始めるぐらいから見ました。化け物だと思います。超越した人だった。戦争を体験しているし、時代的なものもあるのでしょうが、演じるということにとどまらず、すごい人。『おじいちゃん』として見ていたけど、もうちょっと話したかったな」。浩市に関しては「努力の人。比べる対象が三國で、コンプレックスも含めきつかったろうと。息子だから分かります」。 当人も「プレッシャー、ありましたね」と振り返る。しかし、過去形。というのも「他人からどう思われるか、気にしなくなってきた」からだという。「自分が何者か分からない時は、比較されると苦しい。自分って何なんだと。でもそれが、自分の中で明瞭になってきた。今は重圧や責任を、自分の強さに変えられている気がするんです。背負わない人間より背負った人間の方が、窮地に立たされたときの支えがある気がします」
フラットでありたい
芝居も変わってきたという。「以前は周りを見すぎてたのかもしれない。自分自身を相対化しすぎる癖があって、いい意味でも悪い意味でも、達観してる、俯瞰(ふかん)してると言われます。今はそれも持ちつつ、主観としての自分の位置を明確にするには、やっぱり自分が必要だと思い始めています。自分の位置や足りないものが分かってきたし、どう役と向き合うか、どんなふうに自分らしさを出すかを考えられるようになった」 河合優実と共演した「ナミビアの砂漠」はカンヌ国際映画祭に出品、アイヌと和人の関わりを描く主演作「シサム」も控え、活躍が続く。「僕はフラットでありたい。一緒にものを作っていく上で、年上の方へのリスペクトは持ちつつ、誰に対しても態度を変えたくないと思っています」。気負いのない言葉に、自信が感じられるのだった。
ひとシネマ編集長 勝田友巳