【週末映画コラム】怪優ニコラス・ケイジの面目躍如『ドリーム・シナリオ』/アウトローたちの栄枯盛衰『ザ・バイクライダーズ』
【週末映画コラム】怪優ニコラス・ケイジの面目躍如『ドリーム・シナリオ』/アウトローたちの栄枯盛衰『ザ・バイクライダーズ』 2/2
『ザ・バイクライダーズ』(11月29日公開) 1965年、シカゴ。不良とは無縁の日々を送っていたキャシー(ジョディ・カマー)は、けんかっ早くて無口なバイク乗りのベニー(オースティン・バトラー)と出会って5週間で結婚を決める。ベニーは地元の荒くれ者たちを束ねるジョニー(トム・ハーディ)の側近でありながら群れることを嫌い、狂気的な一面を持っていた。 やがてジョニーの一味は「ヴァンダルズ」というモーターサイクルクラブに発展し、各地に支部ができるほど急速に拡大していく。その結果、クラブ内の治安は悪化し、敵対するクラブとの抗争も勃発。暴力とバイクに明け暮れるベニーの危うさにキャシーが不安を覚える中、ヴァンダルズで最悪の事態が起こる。 アメリカの写真家ダニー・ライアンが1965~73年にかけてシカゴのバイクライダーの日常をとらえた同名写真集にインスパイアされた作品で、伝説的モーターサイクルクラブの栄枯盛衰を描く。監督・脚本は『MUD マッド』(12)『ラビング 愛という名前のふたり』(16)のジェフ・ニコルズ。 ノスタルジックな雰囲気があるこの映画は、60年代のバイクカルチャー(バイク、ジャケット、ブーツ、ワッペン、酒とたばこ、ロック、リーゼント、そして写真…)に興味がある人にはたまらないものがあるだろう。 だが、たとえそうでなくても、ライダーたちの群像劇として楽しめるし、その中から、失われた時代への郷愁や、リーダーの存在、組織を運営する難しさなどが浮かび上がってくるところが面白い。 そのアウトローたちについて、女性であるキャシーがインタビューを受けながら、一歩引いた目で当時を振り返るという構成もユニーク。ハーディやバトラー、マイケル・シャノンらの渋い演技も見ものだ。 (田中雄二)