「アメージング!」NYソーホーで大反響 福岡の人形師と陶芸家「変化こそが伝統」と挑んだ新感覚の展覧会
「借金してでも、世界へ行け」と父は
弘峰さんの父・中村信喬さんは、工芸展で数々の賞を受賞。ローマ教皇に作品を献上した、世界的に活躍する人形師だ。 だが、先代とは同じものは作らない。「変化すること」こそが中村人形の伝統だ。1980年代前半、博多人形師は150人以上いたが、今では半数に減少した。先細りが懸念される業界で、中村人形は子から孫へその伝統を受け継いでいる。 父・中村信喬さん「『お前は世界へ行け』『借金してでも行ってこい』と言った。その通りになってくれている。行ったら人と会って縁が生まれる。よい縁をずっとつないでもらえるような人間になるということ。どんどんプレッシャーをかけてやる。経験すると、世界が近くなるからね」 中村弘峰さん「『弘峰が頑張れ』みたいな。息子に託してくれているタイミングなので、僕たちの世代が日本の伝統工芸を、世界の人たちに『素晴らしいものだ』って認めてもらい、文化交流していかなければいけない」
「反わびさび」が面白い
もう1人のアーティストが、福岡県那珂川市に拠点を置く陶芸家・古賀崇洋さん。弘峰さんにとってよきライバルで同志だ。 作品の印象を決定づけるのは、無数のスタッズ。縁起物の招き猫やダルマと、力強い作品が持ち味。戦国武将が顔を守るためにかぶった防具“頬鎧”はお酒をいただく器に。この斬新な焼き物もニューヨークにやってきた。 古賀崇洋さん「不安というか……誰も僕のこと知らないので、まずは名刺代わりの」 作品は一見華やかだが、伝統の技法で作られたものだ。そのものが持つ力を可視化したものが「スタッズ」。とがった感性だが、「リスペクトするのは千利休だ」という。 古賀崇洋さん「日本はわびさび文化があって、静寂・削ぎ落とされたものが好まれる文化があるけど、逆に走ることもすごく面白いんじゃないか。真逆の“反わびさび”」
「現代アートの中枢でどこまで通用するか」
釉薬をつける作業中の古賀崇洋さん「一瞬ですませないといけない作業なんですよ。長く漬けておくと、釉薬が分厚すぎて、焼いたときに割れてしまうので」 ニューヨークに向けての制作だ。 古賀崇洋さん「むちゃくちゃいい感じにあがってるんじゃないですか、これ?」 お披露目する作品に、新作を準備した。今回の展覧会にかける強い思いがある。 古賀崇洋さん「めっちゃ良いあがりです。色もすごくいい。現代アートの中枢にどこまで力が通用するのか。僕自身も挑戦です。針の穴でもいいので何か一つ風穴を開けられたら。それが一番の役目かなと」