モテる男の艶話。彼女は言った。「母が好きな人は私も好きですよ」
人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、長い業界生活の中で見聞きし、あるいは遭遇した、恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載です。 野呂エイシロウの「それはまた誰かのハナシ」
人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、世の恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載。今回のテーマは……。
■ Theme15「先輩の頼み」
「野呂くん、今度ちょっとご飯に付き合ってくれないか?」と先輩Aに呼ばれて、指定の場所に行った。すると、そこにはひとりの若い女性がいた。聞けば、友人の娘さんだという。「いま、大学2年生で、来年就活です」と言われた。広告代理店かマスコミで働きたいというのだ。 「野呂くん、悪いのだが、インターンも含めて彼女が興味のある会社を紹介してもらえないか?」ということだった。後日、彼女を引き連れ、それなりのポジションの人を次々と紹介して、ランチを共にする。僕の仕事にも興味があるらしく、放送業界の断片を伝える。放送局や顧問先にも同行する。
「野呂さんはAさんとは長いんですか?」と聞かれたので、「10年ぐらいですかね」と答えたら、「私の母とAさんは3年ぐらいかな」と言いながら、窓の外を眺めていた。予感はしていたがそうなんだ。「なんで知っているの?」と聞いてみると、「母がAさんの話をすると楽しそうだから」とうれしそうに答えた。「母が好きな人は私も好きですよ。こうやって私のお世話までしてくれるし」と、はにかむ。複雑だが彼女も大人の女だなと思った。
野呂エイシロウ
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。気さくな人柄と豊富な知識、そして巧みな話術にファンも多い。現在は戦略的PRコンサルタント業務など、多忙を極める。 2024年6月号より
文/野呂エイシロウ イラスト/早乙女道春