私たちの年金を運用するGPIFが約8兆円の損失との報道、年金は大丈夫なの?
公的年金というのは、とかく何かにつけてあまり評判がよくありません。古くは年金積立金の壮大なむだ遣いといわれたグリンピアの問題、年金の加入記録の消失問題、そして最近では2015年5月に起きた個人情報流出の問題など、私達を不安にさせるような問題が相次ぎました。 さらに最近では、15年の7~9月の3カ月間で年金積立金の運用が株価の下落の影響によって大幅にマイナスとなり、その損失額が7兆8,899億円ということが発表されました。この数字だけを見て驚いた人も多いでしょうし、一体年金には何が起こっているのだ! こんなことで将来の年金は大丈夫なのか? とさらに不安を募らせる方もいらっしゃることだと思います。 そこでそもそも年金積立金とは一体何なのか? それを運用しているGPIFというのは何者で、8兆円近い損失というのは一体何を意味しているのか、といった事柄について、できるだけわかりやすくお話をしていきましょう。
公的年金には、実は貯金がある?
私たちが国から受け取る年金というのはある種の保険みたいなものです。つまり現役で働いている人が保険料を払い込み、一定の年齢以上(65歳)の人に年金として支給する仕組みですから、言わば現役世代がお年寄りを支えている制度だということになります。ここで大事なことは、これらの保険料の徴収と年金の支給は基本的には単年度ごとに精算しているということです。 つまりその年に徴収した保険料は原則、全てその年に年金として支給しているのです。ところが昨今のように少子高齢化が進んでくると徴収額より支給額の方が多くなるという事態が起こってきます。実際、現状でいえば年間5兆円ぐらいが足りなくなってきています。 ではその足りない部分は一体どうやって工面しているのかということですが、実は年金制度には貯金があります。これが「年金積立金」と言われるもので、国の一般会計とは別枠で「年金特別会計」として、貯金されています。この金額が一体どれぐらいあるのかというと14年度末で約146兆円あります(厚生年金と国民年金)。足りないお金はこの貯金から引き出しているのです。ではこの146兆円というお金は一体どこから来たのでしょうか? 今でこそ毎年の保険料徴収と年金支給の差額はマイナスになっていますが、以前はそういうわけではありませんでした。高度成長の時代には給料も増えていましたし、年金を受け取る人の数もそれほど多くなかったため、毎年の収支はすっと黒字だったのです。そうやってかつて黒字が出ていた分をプールして運用してきたのがこの「年金積立金」です。したがって、現在のように毎年赤字になる場合はこの貯金を取り崩していくことで対応が可能なわけです。