ペットの殺処分がなくならない“本当の理由”は 「飼ってはいけない人たちに無理やり売りつける仕組みが」
「飼育放棄につながる」
ではなぜ人々はペットショップの店頭で合理的な判断ができずに衝動買いをしてしまうのか。 「哺乳類には、とても小さな子を見ると、捨てられなくて、抱っこして、そのまま大事にしてしまう性質があります。だから、街中の大型商業施設に買い物に来ただけの人が、ちょっと目を止めた併設のペットショップで店員に小さな子犬を抱っこさせられると、“この子を連れて帰らないと!”という感情が湧く。合理的な思考を妨げる仕組みになっているのです」(同) 「かわいい」の心理学の専門家、大阪大学大学院人間科学研究科教授(実験心理学)の入戸野(にっとの)宏氏も言う。 「犬の子どもは、どの犬種であっても、かわいいと思える特徴を持っています。全身が丸くて小さく、手足が短い。さらに、抱っこすると、犬の毛の手触り、温かさが一体感を覚えさせ、よりかわいいと感じられます。そうした気持ちが永続的なものだと勘違いすることで、衝動買いにつながります」 無論、子犬はいつまでも小さいままではないし、無駄ぼえすることも、粗相することもある。 「購入した時のプラスのイメージが大きい分、飼うのが大変だったり、懐かなかったりした時、マイナスもまた強くなりやすい。ペットショップでは値段が付けられて販売されていますが、期待した通りにならなかった時、価格に見合わなかったという怒りが生じ、飼育放棄につながることもあるでしょう」(同)
「日本の殺処分の一番の構造的な要因」
番犬目的で犬を飼う傾向がある欧米などと違い、日本では小型犬の人気が高い。小ささや幼さを求める消費者が多いと、当然、ペットショップもそうした子犬を販売しようとする。 「規制ができる前は4週齢ほどで店頭に並べられてしまうことも多かったのですが、まだ母犬の体温を求める週齢なので、ブルブル震えます。そこで人間が抱っこをすると、母犬の体温のように感じて、子犬も落ち着きます。そして、人間の指を思わず吸ってしまう。するとその人は“私が守ってあげないと!”という情が湧くのです」 動物愛護関係者はそう語る。 「ペットショップの店員からも“懐いているからあなたが一番の飼い主”などと言われ、余計に運命の出会いと錯覚する。その時に50万円だとか高額な値段を言われても、合理的な判断ができていないので買ってしまうのです。が、どんな犬も成長してだんだん大きくなるので“こんなはずじゃなかった”となる。これが日本の殺処分の一番の構造的な要因です」
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