百貨店、中古品買い取りで「億単位の利益稼ぐ」。Jフロントとコメ兵が買い取り店
現場経験の社員「リユースは驚異的」
JFRでこの事業を担当する事業企画部事業創造担当は、もともと「事業ポートフォリオ変革推進部」として2022年に立ち上がった。設立の狙いは読んで字のごとく、小売事業だけに頼らない事業の多角化を目指すことだ。 丸岩部長は 「百貨店とパルコの売り上げが(JFRの)営業利益の7~8割を占め、新型コロナウイルス禍ではグループ全体が赤字に沈んで大変苦労した。やはりポートフォリオを変えなければと、独立した部門として立ち上がりました」 と話す。 コロナ禍の打撃もさることながら、この30年間を見ても百貨店の市場規模は縮小傾向にある。中長期的には百貨店事業だけでは苦しくなることは想像に難くない。 JFRとして取り組むべき将来の事業は何か。「事業ポートフォリオ変革推進部」立ち上げ時のメンバー6人が、一人一つアイデアを持ち寄った。そのうちの一つが「リユース参入」だった。 リユース事業を提案した経営戦略統括部事業企画部の下垣徳尊マネジャーは、過去に大丸梅田店で買い取り専門店の出店に携わった経験があった。買い取り専門店の出店場所は、もともと売り場ではない狭い区画だったにも関わらず、1カ月の買取金額の大きさに衝撃を受けたという。 「1カ月で2000万円ぐらいの買取実績を上げていて、非常に脅威的に思った。その後、コロナ禍で人々の死生観の変化や終活需要の盛り上がりを感じたこともあり、可能性があると考えた」(下垣マネジャー) 丸岩部長は 「リユースは市場規模やトレンドを見ても伸びているし、社会的にも経済的にも事業価値がある。我々も競争力を発揮できると判断し、最終決定した」 と振り返る。 とはいえ、同社にはブランド鑑定のノウハウはなく、パートナー企業が必要だった。そこで選ばれたのがブランドリユースの最大手・コメ兵だった。東証スタンダード上場企業である信頼感などから、提携を持ちかけた。 2024年3月~5月には、両社で実証実験を実施。大丸神戸店の10階にブランド買い取り店舗を設けたほか、外商顧客のもとへ出張買取にも出向いた。 「目標値に対し約1.5倍の買取金額をあげることができた。年換算したら、うちに入っているリユース事業者の中でもトップクラスになるくらい」(丸岩部長) この実証実験では、コメ兵は社名を前面に出さず“黒子の立場”で鑑定を担い、大丸が主体となる形式をとった。商品を持ち込んだ人の多くは、これまでに買い取り店を利用したことがなかったという。 すでに近年では、百貨店のテナントとしてリユース事業者が出店するようになっているが、百貨店の顧客にとっては、高額なブランド品を「売る」ことに抵抗を感じる人も少なくないだろう。 特に初めて「売る」という百貨店ユーザーらにとっては、これまで百貨店が築いてきた顧客網や信頼が、競争力を発揮することが期待できる。
土屋咲花