2025年、ついにオアシス再結成......その真実を語ろう
<よくある兄弟げんかと和解が世界の大ニュースになる、オアシスがここまで人々を熱狂させる理由は>
仲たがいした兄弟が和解した──。それは、分かり切った出来事リストの中でもほぼトップに来るたぐいのもの。クマは森の中でふんをするとか、教皇はカトリック教徒だ、と同じだ。【コリン・ジョイス(本誌コラムニスト)】 <ネブワースの野外ステージでの「ワンダーウォール」などを聴きながら読む> ところが、ギャラガー兄弟が昨年8月、2025年にオアシスの再結成ツアーを行うと発表すると、イギリスでは大ニュースになった。 オアシスは一大事だし、公然の不和は長年続いていたので、この興奮もある意味理にかなっている。それでも疑問は残るし、オアシスの謎はほかにも多々ある。 まず、ギャラガー兄弟の「確執」がこんなにも伝説的な位置付けになったことが奇妙だ。研究によれば、兄弟姉妹がいる人の約4人に1人が、成人後に兄弟姉妹のうちの1人と疎遠になるという。さらに、そのほとんどが永久的な絶縁というよりは一時的な疎遠で、何度かそんな状態を繰り返している可能性がある。 とはいえ、ギャラガー兄弟に起こったことはありがちなことだというために、僕はそこまで確固たる科学的根拠に頼らない。まず、そもそも彼らはマンチェスター出身の「北部人」だから、やや攻撃的な気質と考えられがち。ステレオタイプかもしれないが、大阪人はお金にうるさいというのと同じようなものだ。
さらに家族でもめがちなアイルランド系
さらに、彼らは(僕と同じく)アイルランド系。同胞に対して申し訳ないが、アイルランド系は家族の確執をよく起こしがちだ。大規模な結婚式があったと聞けば、僕たちは冗談で「で、けんかはあった?」と聞く。 ともすると、オアシスで普通じゃないところは、兄弟が仲たがいしたことではなく、その前に初期メンバーの3人を脱退させたことと、交代した1人も辞めさせたことかもしれない。 北部人はやっぱりけんか好きなだけだろう、という結論になるかもしれない(同じ時代を代表した他の2つのマンチェスターのバンド、ザ・スミスとストーン・ローゼスも非友好的な解散をしたことを付け加えておこう)。 ギャラガー兄弟の確執には興味深い力学が働いた。それを乗り越えるに値する莫大な金銭的動機があったのだ。実際、不和が長引くほどその金額は膨れ上がった。オアシスが15年前に解散したという事実は再結成ツアーに巨大な需要があることを意味していた。 今回の感動的な和解は、ノエル・ギャラガーが2000万ポンド(約39億円)の離婚請求に直面しているさなかに起こったことは注目されている(モンティ・パイソンのコメディアン、ジョン・クリーズの悪名高い慰謝料ツアーを思い起こす人もいるだろう)。 ■チケット争奪戦で詐欺も発生 再結成のビッグニュースの後には、コンサートチケット争奪戦のビッグニュースも続いた。誰もかれもが、「Be Here Now(今、ここ)」ならぬBe There Then(その時、そこ)に行きたがっているかのようだ。 サイトで何時間も待機した挙げ句、順番が回ってきた瞬間に回線が切れた、などといったシステムの過重負荷でありがちなトラブルも起こった。 チケット価格が定価より数百ポンドもつり上がることを意味する「ダイナミック・プライシング」にも怒りの声が上がった。そして、必死な上にだまされやすい人々に詐欺師が架空チケットを売りつけるという、ありがちな詐欺事件も発生した。 もちろん大きな謎は、なぜオアシスがここまで人気があるのかということだ。彼らは最も独創的なバンドというわけではない(彼ら自身でさえ、『ステンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツ』のアルバム名でそれを認めている。要は、自分の業績は巨人のごとき先人たちの業績の上に乗って成し得たことだという意味だ)。